食道楽・秋の巻

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『食道楽』秋の巻

食道楽・秋の巻(くいどうらく・あきのまき)は、明治36年(1903年)1月~12月まで報知新聞に連載された村井弦斎の小説『食道楽』で、のちに「春の巻」「夏の巻」「秋の巻」「冬の巻」として出版された中の一つである。

天長節夜会食卓の真景

大隈伯爵家温室内の食卓

○天長節夜会食卓の真景口絵参照
 巻頭の口絵は明治三十六年十一月三日帝国ホテルに開かれし天長節夜会の食卓を写せしなり。 食堂は二十間に八間の長方形にて周囲は紅葉流しの幔幕を張詰め、天井には牡丹形の紅黄白色常盤の緑を点綴す。 中央の太き柱は薬玉および小旗を以って飾られ、無数の電灯は四方に輝きて目映きばかり。 当夜の料理は前壁に対せし一列の食卓に配置さる。 有名なる夜会の事とて一千有余名の来賓に充つるその献立の如何に按配され、厨人の如何に苦心せしやは料理法に重きを置かるる者の等しく知らんと欲する処ならん。 今その概要を説明せんに第一は生蠣および魚卵(ウィトル、カビヤ)の料理にて生蠣はレモンの汁を湛え、カビヤは魯西亜産鱒魚の卵の製したるものなり。 第二は冷製魚肉玉子掛汁および寒天寄物(マヨナイズ ド サモン、アンギール ア ラ ゼリー)にて冷製魚肉玉子掛汁は鮭の冷肉に玉子の黄身にて作りたる掛汁を添え寄物は鰻の肉をゼリーにて寄せしものなり。 第三の料理は雁肝冷製寄物(アスピック ド ホアグラ ド ストランボルダ)といい雁の肝をゼリーにて寄せたるもの。 第四は豚肉冷製寄物(ジャボン デコレ ア ラ ジェリー バアンド フルツ アッソルチ)にしてハムを寄せしもの。 第五は冷製混肉および冷製饂飩粉入鳥肉(パテ ド ジビィ、ガランチン ド ワライ)とて混肉は軍鶏の肉へ豚の肉を砕きて詰めしもの。 饂飩粉入鳥肉は雉子の肉を用いたるなり。 第六の松露入冷製鴫肉(ベカシン トリッフェ)は仏蘭西松露を砕きて鴫の腹へ詰め、第七の海老および混菜入洋菜(サラダアラルース、サラダ ド オマー)は野菜類および海老を用い、第八の氷酒(ポンチ、ロヤル)は酒を氷結せしめしもの、第九の牛酪製菓子および玉子入製菓(バボロア ア ラ シャンテー、プウダン アラ デプロマ)は牛乳の寄物にて玉子入製菓は菓物を包みたり。 第十は三鞭入寒天寄冷菓(ジェリー オー フリイ ア ラ シャンペン)にてゼリーに三鞭の入りし菓子。 第十一の牛酪製氷菓(ムース オー フレイズ)は菓物入の菓子なり。 第十二の挽茶および香入氷菓(グラス オー テイ、グラス ア ラ ワニー)は挽茶および香料入のアイスクリーム。 第十三の果実製菓(ガドー エ フルツ)は水菓子と干菓子ひがしなり。 これらの料理はいずれも精選せし佳品を以て調理せられたれば味の美なること内外に誇るに足らん。 会食の時間となれば賓客は三々伍々幾多の卓に倚って祝杯を挙げ二十余名の給仕人燕尾服にて食卓の間を周旋す。 名にし負う一年一度の夜会主客陶然として歓声場裏に和気の洋々たる事春の如ごとし。

目次

  • 第百八十二 交際法 結婚問題
  • 第百八十三 適不適 自分の運
  • 第百八十四 過去と未来 男女の覚悟
  • 第百八十五 鮎の味 川の相違
  • 第百八十六 鮎の料理 犢のチヤツプ 同シチウ
  • 第百八十七 蠅取男
  • 第百八十八 蠅取器械
  • 第百八十九 下等料理 料理屋料理
  • 第百九十 中等料理 ホテル料理
  • 第百九十一 上等料理 家庭料理
  • 第百九十二 昆布スープ カピヤカナぺール
  • 第百九十三 鳥スープ 米と鳥のスープ
  • 第百九十四 鮎と犢 鮎のフエタス ジブレグレーオーコロトン 魚のケズレー
  • 第百九十五 鶏の雛 雛のロース 人工孵卵器
  • 第百九十六 鶏の買入 鶏の鑑別法
  • 第百九十七 鳥料理 鶏の筋抜き 臓物料理 雁臓料理
  • 第百九十八 大立腹 ポンチ アスペラガスの料理 羊のロース
  • 第百九十九 梅料理 デプロマーテ 梅の煮方 シロツプ ジヤム 梅素麺
  • 第二百 菓物の効 コーヒーアイスクリーム
  • 第二百一 大混雑 空巣ねらい
  • 第二百二 食物研究会 家族的交際
  • 第二百三 料理見物 料理人の腕前
  • 第二百四 輕便法 玉子焼鍋の応用
  • 第二百五 カステラ 玉子の泡立
  • 第二百六 玉子の雪 玉子の菓子
  • 第二百七 ビスケツト 蕎麦の菓子
  • 第二百八 蒸し料理 玉子プデン 南瓜プテン オムレツ
  • 第二百九 合ひ物 食物食べ合せ
  • 第二百十 南瓜料理 南瓜の三杯酢 南瓜葛掛け 南瓜丸蒸し 南瓜プデン
  • 第二百十一 野菜の煮物 白ソース煮 茄子料理色々 冬瓜の塩漬 冬瓜胡麻酢
  • 第二百十二 魚のグレー 鰻のシチユー 鰌のフライ 鮎の酢煮 鮎三杯醤油 鮎甘露煮
  • 第二百十三 旅の弁当 鮎の鮨 サンドウヰツチ色々
  • 第二百十四 汽車の衛生 病気の原因
  • 第二百十五 旅店の衛生 印度風のライスカレー
  • 第二百十六 ライスカレー 海老のサラダ フランチンース
  • 第二百十七 ソーダ松魚 ヘツトの製法 ソーダ松魚の区別 松魚摺身 松魚鹿煮 松魚蝋燭焼
  • 第二百十八 鰺料理 鰺の酢煮 鰺酢の物 鰺蓼蒸し 鰺白ソース掛け 鰺味噌焼 鰺醤油干し 泡雪ソース ロールキヤベツ ドーナツ
  • 第二百十九 下駄と帽子 ロールパン
  • 第二百二十 脂肪の欠乏
  • 第二百二十一 食物の成分 家鴨料理色々
  • 第二百二十二 胃と膓
  • 第二百二十三 吃逆の薬 腹中の沸騰酸
  • 第二百二十四 西洋の葛餅 ブラマンチ色々 米のブラマンチ 桃と梨との煮方 牛肉崩し料理
  • 第二百二十五 赤茄子 牛肉崩し料理 コロツケ 赤茄子スープ 同シタフヱー
  • 第二百二十六 チース料理 チースのフエタス マカロニチース 牛肉の煮加減
  • 第二百二十七 日中の芝居
  • 第二百二十八 老人の食物 米のプデン
  • 第二百二十九 ソフレー チーストース チースストロン チースソフレー 米のソフレー
  • 第二百三十 赤茄子の味 冷しコーヒー レモナード
  • 第二百三十一 暑中の飲物 シロツプの取方 ライムジユース カツブカスター ソドル 赤茄子シチユー 赤茄子シタフヱー
  • 第二百三十二 赤茄子ジヤム 赤茄子ソースの取方 苺のジヤム
  • 第二百三十三 下等肉 ブリスケの料理 残肉料理 ムツの子の料理
  • 第二百三十四 月の夜
  • 第二百三十五 運命
  • 第二百三十六 女の心得 家庭の和気
  • 第二百三十七 媒介役
  • 第二百三十八 茶話会
  • 第二百三十九 二十銭弁当 三種のサンドイツチ
  • 第二百四十 安直主義 カツブケーキ
  • 第二百四十一 冷肉料理 コールポーク テンピの炭
  • 第二百四十二 寄せ物 牛の舌 食物の食べ頃
  • 第二百四十三 手軽な菓子 レモンのゼリー 手軽なビスケツト チヨコレート菓子
  • 第二百四十四 アイスクリーム
  • 第二百四十五 上等の品物 クリームの焼痕
  • 第二百四十六 クリーム ポンチの色々
  • 第二百四十七 二十銭料理 手軽なスープ 鰯のフヱタス ランのコロツケ
  • 第二百四十八 ペラオ飯 煮たプリスケ パンのプデン
  • 第二百四十九 三十銭料理 脛のスープ 鰯のグレー 赤茄子の詰物
  • 第二百五十 牛の尾 臓物料理 犢の頭料理
  • 第二百五十一 琺瑯鍋 鍋の使ひ方
  • 第二百五十二 食育論 小児の食育
  • 第二百五十三 玉子廻し コーヒーケーキ
  • 第二百五十四 泡の立ち方 夏と冬の相違
  • 第二百五十五 珈琲ケーキ テンピの取扱
  • 第二百五十六 お茶菓子 バターケーキ ヂヤミロール
  • 第二百五十七 カステラ菓子 ジヤムケーキ カビネツトブデン ホンザー
  • 第二百五十八 鰯料理 鰯の酢煮 同糠漬
  • 第二百五十九 一名案 洋行策
  • 第二百六十 食道楽会
  • 第二百六十一 料理の粋
  • 第二百六十二 食事法
  • 第二百六十三 試験問題 料理の原則
  • 第二百六十四 看病料理 看護婦の役目
  • 第二百六十五 病人見舞 腐つた菓子
  • 第二百六十六 料理の原則 玉子の成分
  • 第二百六十七 魚の区別 白肉に赤肉
  • 第二百六十八 料理の教授法 麹の作用 理学作用
  • 第二百六十九 鳥の汁 鶏の吸立汁 ズイキ和へ 鯛の浪花煮
  • 第二百七十 茶碗鮨 鮪の料理 茄子の鍋田楽 茄子辛子漬
  • 第二百七十一 茄子の性質 百一漬 茄子の化学作用
  • 第二百七十二 善後策
  • 第二百七十三 家庭の清潔
  • 第二百七十四 恋愛の害
  • 第二百七十五 家庭の教育

附録

米料理百種

日本料理の部

西洋料理の部

パン料理五十種

関連項目