薑汁番茄
薑汁番茄(ジャンズー・ファンチェ:生姜トマト)は、台南、高雄、屏東など台南で生まれた最古の小吃(シャオチー)で、アイスフルーツショップやフルーツスタンド、夜市の屋台で売られている名物の「台湾流冷やしトマト」です。 独特な特製ダレであるため、台南を訪れる観光客の名物になっている。
特徴
台湾流の冷やしトマトは、カキ氷を含むアイスや果物と並び、夏には涼味として人気が高く、台南の風物詩になっている。 食べ方は北部と南部で違い、北部では梅粉(プラムパウダー)をかけて食べ、南部では特製の生姜ダレで食べられます。 使われるトマトは、1624年にオランダ人が台南に植えた黑柿番茄という古い品種で、完熟していない緑がかったトマトが使われる。 薑汁番茄は、香りが高く歯ごたえのある未完熟トマトと酸味、塩味、甘味、生姜の風味を楽しめる一品です。
材料
基本構成
- 黑柿番茄:2個
- おろし生姜:大さじ1
- 醬油膏(台湾とろみ醤油):大さじ2
- 甘草パウダー:小さじ1/2
- 砂糖:小さじ1
※梅粉(プラムパウダー)は、フルーツにかけられたり、個人がポテトチップスなどのスナック菓子に味変で使ったりする台湾で一般的な調味料であるため、薑汁番茄に加えられることもある。
トマト
使われるトマトである黑柿番茄は、台湾のエアルームトマトの一種です。 それをさらに未過熟で使うことがポイントになっています。 エアルームトマトは、交雑をしていないため、古来のトマトの風味や食感が特徴です。 この場合、未完熟のトマトを採取するか、青トマトを少し放置することで近づけることが出来ます。
砂糖
薑汁番茄では、砂糖が使われます。 サトウキビの栽培は、日本が砂糖を知らなかった時代に台湾から日本南国に伝わったという話があります。 日本人がその味を知った時、きっと空に逝ったはずと言われるぐらい、貴重であったのです。 しかし、植物の適応性から日本はそれ以上、北上して栽培しようとしてもできなかった。 薑汁番茄が生まれた当時、砂糖の精製技術が整っていたのであれば、白砂糖が使われたはずですが、黒砂糖やキビ砂糖であることも考えられ、定かではありません。 それを考慮すると、黒砂糖やキビ砂糖を使用することも一興です。 なぜなら、台湾の醬油膏は、黒砂糖やキビ砂糖を加えても一体感をもつものです。 また、ストレートに甘味がくる白砂糖より自然に合う可能性が高い。 現在の九州の甘口醤油の多くは、ステビアや人工甘味料で甘味を出して製造されていますが、原点はどうであったかという点を推測しても、黒砂糖やキビ砂糖が使われていても決して不思議ではありません。
醬油膏
特製ダレの主成分である台湾の醬油膏は日本の醤油やたまり醤油、甘い九州の醤油とも違う、甘さと粘度の高いとろみがあります。 この醬油膏は台湾で日本人が醤油限定として使うようなものではなく、一種の醤油系ソースです。 例えば、台湾黒酢といわれる烏酢は、ライトなウースターソースであって、黒酢ではありません。
醬油膏は、台湾の寿司屋台では、煮切り醤油のように寿司に使われることもありますが、日本の「煮切り」とは別ものです。 しかし、中華系の炒め物や餡や下味などには、日本の醤油では出せない味を発揮する調味料です。
台湾の醬油膏が無い場合は、まずこれを日本の醤油で作り再現します。 この場合、新鮮な醤油でも可能ですが、家庭で古くなった醤油を是非、再利用することがお勧めです。 日本酒と紹興酒の色と香りに大きな違いがあるように、古くなった醤油で構いません。 醤油は見た目は黒いですが、見えないところで更にメイラード反応が進んでいることに起因します。 古い醤油は、刺身など料理によっては嫌悪感を示すこともありますが、料理次第では一体感と独特な香りを生み出します。 これは、薑汁番茄だけでなく、青椒肉絲などや肉まんなどの醤油味の餡や下味に使えます。 紹興酒を用いない場合でも、それらしい香りが出るからです。
材料
- 醤油(古い醤油を再利用)
- 砂糖(好みの砂糖)
- コンスターチ
※ここに加える砂糖の種類は、上記で記述した砂糖の歴史の中でお好みの趣旨によって選んでください。
- 白砂糖の甘味は通常、ストレートに来ますが、古い醤油の場合は、それをある程度、直球的な甘味を慣らして黒糖でも入れたような雰囲気に慣らしてしまう力があります。
- キビ砂糖は多少複雑感があり、ある程度の重さがあります。
- 黒砂糖は甘味に重さと厚さ、そして香りがあります。砂糖の量と熟成期間によっては香はなくなり、重厚になり、タイや東南アジアの濃い口醤油であるケチャップマニスに近いものに変質します。
甘さは、味見をしながら作れば問題ないはずですが、濃度は砂糖とコンスターチによって左右されます。 原材料の砂糖の種類や濃度によって、別のアジア諸国の調味料であるケチャップマニスにもなりえるということです。 台湾の醬油膏は、日本では一般的な中濃ソースか、若干それより軽めぐらいの粘度で作れば問題ありません。
薑汁番茄は、この醬油膏にさらに砂糖を加えて特製ダレを完成させるメニューです。 これに使用する砂糖も同じく、お好みの砂糖で調合できますが、重要な事は醬油膏は食材に対して、決して甘味を決定づける調味料ではないということです。 醬油膏は、炒め物、餡などでも使えるように甘さは鈍重ではなく、日本の「かえし」、「本みりん」や「みりん醤油」とも違います。 醬油膏は大豆の発酵的な香りと旨味、塩味を構成していて、あくまで甘味は補助的な調味料です。 醬油膏1本を使っても、日本のような煮物にはなりません。 そう言った意味で、独特の軽やかさや、加熱時の芳醇さがあり、醬油膏はあくまで名前の通り醤油の一種になっています。 むしろ、薑汁番茄の場合、塩味を構成しているのが醬油膏です。 日本人は、醬油膏をたびたび「みたらし団子のタレ」として喩えられていますが、決してそこまでのものではない。 寿司に煮切りで塗られたら、そう思う人も多いかもしれません。 しかし、人類の文化を味わう者にとっては、母国で食べる物と同じであれば、訪れる意味もないのです。
加熱
作り方
- 上記の手順で作った特製の「醬油膏」を用意する。
- おろし生姜、
- 未過熟なトマトに、特製ダレをかけたり、小皿に盛ってディップして召し上がってください。