八宝菜
八宝菜(はっぽうさい/八寶菜:パーパオツァイ)
八の定義
中国の長江流域では、今でも一般的に八宝菜と呼ばれるちょうど8種類の食材が指定されているが、主な食材の種類は地域によって、さらには家庭によってさまざまである。
例えば浙江省では、八宝菜の材料として、木綿豆腐(白豆腐)、冬菜の茎(冬菜杆)、大根(白萝卜)、人参(胡萝卜)、厚揚げ(油豆腐)、シログワイ(荸荠)、赤唐辛子(红辣椒)、葉ニンニク(青蒜苗)などが使われる。 その後、豆もやし(黄豆芽)やタケノコ(竹笋)も食材に加えて数えるようになったが、現在でも8種類である。
一方、安徽省蕪湖市では、大根(白萝卜)、人参(胡萝卜)、キクラゲ(木耳)、椎茸(香菇)、ユリ科ワスレグサ属の花蕾(黄花菜)、押し豆腐(香干)、押し湯葉(豆腐皮)、タケノコ(冬笋)またはカラシナの茎(芥菜杆)の漬物(酸菜杆)から成る8種類ある。
しかし、日本では「八」はあくまで中華料理的なイメージであり、実際には8種類以上でも8種類未満でも八宝菜と呼ばれることが多い。 また、「具沢山」の意味合いで「五目」(什錦:シーチン)にも置き換えられる。
効能
中国では八宝菜に使用する8種類の食材は単なる具材ではなく、料理に風味を与えるために用い、口の中をすっきりさせ、食欲を増進させる効果があるとされる。 また、八宝菜に含まれる有機酸と塩が体内で消化することによって、アルカリ性のミネラルが生成され、体内の酸塩基平衡(さんえんきへいこう:体内での酸性物質とアルカリ性物質のバランス)を整え、血液が強酸性になるのを防ぐとされている。
八宝素菜
八宝素菜(パーパオスーツァイ)は、長い歴史を持つ潮州料理の中で精進料理を代表するものである。 古くは唐・宋の時代から、広東省の潮州市、汕頭市の地域では八宝素菜などの料理が作られていた。
伝統的な八宝素菜は、ハスの実(莲子)、シイタケ(香菇)、乾燥フクロタケ(干草菇)、タケノコ(冬笋)、髪菜(发菜)、ハクサイ(大白菜)、乾燥湯葉(腐枝)、クリ(栗子)など8種類の食材を丁寧に煮込み、優しい味と豊かな香りが楽しめる料理で「八宝」という名前は、潮州の人々が愛し、大切にしているものである。
潮州の名物料理である八宝素菜の伝説として有名なのは、清の第4代皇帝である康熙帝(こうきてい)の時代にさかのぼる。 唐の開元26年(738年)に建立された潮州市の開元寺(开元寺)で、潮州地域一帯の寺院の調理を担当する各料理人の全員が参加し、腕を競う料理大会が開催され、その中で八宝素菜の調理も行われたという。
多様性
日本に現存する最古の中国料理店であった1884年(明治17年)創業の聘珍樓(へいちんろう)横濱本店が2022年5月15日に閉店したことによって、1892年(明治25年)創業の萬珍樓(まんちんろう)本店が実質的に日本最古の中国料理店になったが、以下は両店を例に挙げている。
八宝菜は、スープ系の麺類にも用いられる。 また、あんかけ焼きそばにも用いられ、メニュー名は同じでも顧客に麺の焼き方をリクエストして対応することで2種類のバリエーションで作られる。 これは長崎で一般的な「皿うどん」で麺の選択でカタ焼きは「パリ麺」と呼ぶ文化にも見られる。