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2022年11月18日 (金) 21:35時点における版
麻婆豆腐(まーぼーどうふ)は、四川料理の中で「麻辣:マーラー」の特徴を際立たせている代表的な料理の一つである。
基本的な材料は、豆腐、牛挽肉、豆板醤、花椒で構成され、特徴的な香味である「麻:マー」は花椒、「辣:ラー」は唐辛子で醸し出される。 近年、「麻辣」は日本のスラングで、唐辛子の「辛味」と花椒の「痺れ」を合わせて「カラシビ」と呼ばれている。
日本も含め、世界的に人気の高い麻婆豆腐は、各地域に順応した辛さに調整したり、現地の調味料でアレンジされることが多い。
歴史
中国
名前の由来
陳麻婆豆腐
陳麻婆豆腐(陈麻婆豆腐)は、清朝の通史元年(1862年)、成都の北にある万富橋で創業し、当初は「陳興盛餐庁」(陈兴盛饭铺)という店名だった。 オーナーの陳春福は早くに亡くなり、小さなレストランはオーナーの妻が切り盛りしていた。 彼女は少しあばたのある顔をしていて「陳麻婆」と呼ばれた。 橋の上には高い欄干が並び、その上には魚を捕るための東屋があり、金と青の色絵が描かれていた。 陳興成の店の主な客は油屋である。 この人たちは、豆腐や牛肉を買って、油籠から植物油をすくい、店主の奥さんに加工を頼むことが多かった。 時が経つにつれ、陳は豆腐のための独自の調理法を開発した。 色も味も満点の豆腐を調理してくれた。 この豆腐が評判となり、陳の料理は有名になった。 また、清の時代には、その魅力を伝える文書が多く残されている。
それを証明する清朝末期の詩がある。 「麻婆陳は今も有名で、豆腐は最高に美味しく焼き、万富橋で幕が動き、紳士は春酒に酔っている」とある。 文人墨客がよく来るんですよ。 店主の奥さんの顔のあばたを見て、陳麻婆豆腐と名付けた善人もいました。 この話が評判になった。 そこで、店名を「陳麻婆豆腐」としたのである。
成都総合ガイドによると、陳麻婆豆腐は清朝末期に成都で有名な食べ物だったそうです。 陳麻婆豆腐は歴代の努力により、現在140年以上にわたって繁栄し、美食家たちから好評を得ています。 文献によると、初期の麻婆豆腐の原料は、植物油と黄牛が特徴的であった。 調理法は、フライパンに大さじ1杯の植物油を炒め、大さじ1杯の唐辛子のみじん切りを入れ、次に牛肉を入れ、水分を飛ばしてカリッとするまで焼き、黒豆豆腐を入れるというものである。 豆腐を加え、少量の水を加えてスプーンで数回よく混ぜたら、鍋に蓋をして弱火でスープを乾かし、食べる前に挽き肉胡椒をふりかける。
1909年、成都人民新聞が発行した『成都総覧』(清朝時代の傅崇儒著)には、宝西園、来唐園とともに「成都名物店」23軒の中に当店と「陳麻浦の豆腐」が掲載されています。 陳麻婆豆腐の歴史は『金城周子記』や『芙蓉十字路』などの書物に記されている。 清朝末期の詩人、馮家児の「金城竹枝の詞」には、「馬坡陳の店は今も有名で、豆腐は最も精妙な味で焼き、万富橋のそばの幕は動き、紳士は春酒で酔っている」とある。 麻婆豆腐は、その知名度から全国に広がり、日本やシンガポールなどの国でも食されています。
抗日戦争時代
戦時中、四川は後背地であったため、中国全土から各界の人々が成都を訪れ、麻婆豆腐を認めた。 そして戦後、中国全土に麻婆豆腐がもたらされた。 陳麻婆四川料理店が成都と四川省を出て大規模に出店したのはこれが初めてで、これにより陳麻婆豆腐は中国全土の人々に認知されたのである。
伝統的な麻婆豆腐を構成する八か条
- 麻:(マー)挽いた花椒のしびれる味
- 辣:(ラー)唐辛子を使った辛味
- 燙:(タン)アツアツの出来たて
- 捆:(クン)餡がからんでいる。 豆腐一切れの上に餡がある
- 酥:(スー)そぼろがサクサクしている
- 嫩:(ネン)食感がねっとりしている
- 鮮:(シェン)新鮮な豆腐を使用している
- 香:(シャン)調味料スパイスの香りを引き立てている
日本
陳健民
赤坂 四川飯店
主な香辛料・調味料・香味野菜
陳麻婆豆腐の基本構成
郫县豆瓣
郫県豆板醤(郫县豆瓣:ピーシェン・ドウバン)は、ソラマメと唐辛子を主原料とした発酵調味料で四川料理には欠かせない調味料である。
郫県は、現在の四川省・成都市・郫都区(ひとく)にあたる。 「豆板醤」という呼称は造語であり、現地では「豆瓣」(ドウバン)である。 日本では近年まで豆板醤は市販品も含め、「赤い」というイメージであったが、料理の鉄人で人気を博した陳健一が「郫県豆板醤」をトレードマークとして用いたことで、プロの使う調味料として、「褐色」の豆板醤の存在が知られるようになった。 伝統的な郫県豆板醤は野外で天然発酵および醸造される。 発酵期間は3~5年で熟成により褐変し、黒みを帯びていることから、通称「黒い豆板醤」ともよばれる。 とても高価であり、生産国の中国といえども庶民が使うことはほとんどない。
伝承によると、明朝末期から清朝初期にかけて、ある渡来人が蜀に向かう途中、飢えを満たすための頼みの綱であるソラマメが絶え間ない雨に打たれてカビてしまったという。 捨てるには忍びなく、畑の畝に置いて乾燥させ、生の唐辛子と混ぜて食べたところ、とても美味しく余韻が長かった。 これが郫県豆板醤の原点といわれている。
豆豉
豆豉(トウチ)は、中華料理で風味付けに用いられる豆類の発酵食品である。
朝天干辣椒
朝天干辣椒(チョウテンガンラージョウ)
花椒粉
花椒粉(ファージョウフェン)
四川料理の伝統的な調理法では、花椒が多用される。 中国北部の伝統的な家庭料理である肉の煮込み(炖肉)に花椒と八角は欠かせない香辛料である。
四川料理の人気に伴い、花椒の栽培面積と生産量は飛躍的に増加した。 チベット南東部から江蘇省、浙江省の沿岸部、平野部から青海省の標高2,500mの高山地帯などで栽培されているが、海南省や広東省では生産されていない。
青蒜苗
青蒜苗(チィン・スワンミャオ)または蒜苗(スワンミャオ)は、ニンニクの苗がある程度成長した青ネギ状の苗のことで、日本では「葉ニンニク」と呼ばれている。
葉ニンニクは、1997年(平成9年)12月19日に発売されたグルメ漫画『美味しんぼ』第64巻の第1話「麻婆豆腐の秘密」に登場したことで、ある一定の人々に知られる存在になったが、日本国内のマーケットでは、ニンニクとニンニクの芽が主流であり、未だ日本国民の多くに知られている食材ではなく、慣れ親しんでいる食材でもない。
一般的に多く用いられるニンニクの鱗茎部位と同じ風味はあるが、辛味はそこまで強烈ではなく、ネギやニラのように食すことができる。 栄養価としては、ビタミンCの他、たんぱく質、カロテン、チアミン(ビタミンB₁)、リボフラビン(ビタミンB₂)などの栄養素が豊富に含まれている。 ニンニク特有の風味は、主にアリシンによるもので、老廃物の蓄積を防ぐ効果があることが知られている。 また、インフルエンザや腸炎、環境汚染によって引き起こされる病気や感染症予防にも効果的である。 葉ニンニクには、心血管および脳血管に対して一定の保護効果があり、血栓の予防や、同時に肝臓を保護する効果があるとされる。
山東省臨沂市などで大規模に栽培されており、その経済効果は大きい。 また、培地を択ばない栽培法も多く公開されていることで、中国では自家消費のために家庭菜園やベランダなどでも気軽に栽培されている。
老抽
老抽(ラオチョウ)は、陳年醬油、濃醬油とも呼ばれる大豆と小麦粉を主原料とした中国醤油の一種である。 台湾の醬油膏に似て、濃い色と光沢、そしてコクがあり、濃厚で甘く、塩辛くない風味が特徴。 「老抽」(古いエキス)という名前が示すように、淡口の生抽(サンチョウ)と比べて熟成期間も長い。 砂糖や甘草などの甘味料、カラメル、でん粉などが加えられる場合もある。
主に料理に塩味を与えるためではなく、色と風味を加えるための調理用として使われ、日本の刺身醤油のように直に使うことはない。 煮物や炒め物、ソース、赤褐色に仕上げる「紅燒」(醤油煮込み)など、色や照りが必要な料理に使われる。 通常の醤油で料理に醤油の風味と色を与えるために4、5滴必要な場合、老抽は1滴で十分とされる。
黄酒
黄酒(ホアンチュウ)は、中国特有の酒で3,000年前から醸造されている酒である。 米を主原料とし、3年以上長期熟成させたものは老酒(ラオチュウ)とよばれる。 もともとは浙江省、湖北省の房県(房县)、江蘇省の南通市が産地で、紹興酒はその代表格であり、これらの地域は今でも黄酒の主要産地の一つである。 明・清時代には、穀物を大量に消費する黄酒は禁酒令が出され、個人的に醸造することだけが許され、酒として市場で取引されることはなかった。
料理酒には浙江紹興酒が最高とされ、中国料理の多くのレシピには、紹興酒が使われており、レストランや家庭にとって欠かせない調味料となっている。 アミノ酸の含有量はワイン1600ppm程度に対し、紹興酒は5000ppmと非常に高い。 料理における紹興酒の主な役割は、「生臭さを取り除く」「料理に色艶と風味を与える」「料理を美味しくする」「料理の食感を柔らかくする」などがある。
地域や店により追加されるもの
红油豆瓣
紅油豆板醤(红油豆瓣:ホンユー・ドウバン)は、発酵期間が短い豆板醤で、オイル漬けによって保存性を高め、鮮やかな赤い色を保持する効果がある。 また、このオイル自体も紅色を帯び、辛味のある油になる。 長期熟成の郫県豆板醤のまろやかでコクのある辛味に比べ、エッジの効いた辛味が特徴。 麻婆豆腐などの料理に郫県豆板醤と紅油豆板醤をブレンドして使う名店もある。 郫県豆板は加熱して使用されるのがほとんどだが、紅油豆板醤はそのままの状態でタレやソースに使われる場合もある。
甜面酱
酒酿
辣椒油
花椒油
蠔油
一般的にオイスターソースとよばれ、蒸し牡蠣や煮牡蠣の濃縮汁や生牡蠣を加水分解して抽出した牡蠣エキスと砂糖、醤油、酢、でんぷん、カラメルなどで調整した調味料である。 褐色で粘りがあり、風味豊かなのが特徴。 李錦記の創業者である李錦驤が偶然発明したという説が有力で、中国の広東省から広まったとされる。
XO酱
干し貝柱(干貝)、世界三大ハムの一つである金華ハム(金華火腿)、干しエビ(蝦米)を主体とした香港発祥のピリ辛調味料。 英語ではXOチリソース。 名称はブランデーの最高級品質を表す「X.O」(エクストラ・オールド)にちなむ。 XO醤が名を馳せた当時、日本の多くの料理人が憶測でブランデーを用いて自家製XO醤(ブランデー入り海鮮醤)を作り、またメディアでは「ブランデーを使用した高級調味料」として紹介されたが、「X.O」は高級の意味合いで引用したものであり、実際にはブランデーは使われていない。 起源については諸説あるが、1986年、料理研究家の談錫永(通名:王亭之)が、ペニンシュラホテルの「嘉麟楼」の顧問を務めた際、「馬拉盞醬」をアレンジして現在のXO醤に改良したという説が有力である。
沙茶醬
淡水虾皮
淡水蝦皮(淡水虾皮:ダンシュイ・シァピー)は、湖や河川などの淡水域に生息する小型のエビを殻ごと干したもの。 特産地には、湖南省、山東省、浙江省、遼寧省、広東省、江西省、広西チワン族自治区などがあり、養殖もされている。 東南アジアの伝統的な調味料「シュリンプペースト」(海老の塩漬け)のような発酵臭はなく、無塩加工がほとんどである。 葉物の炒め物や炒飯、スープなど用途は多岐にわたる。 海産の中型、大型のエビと異なり、強いエビの風味で料理を占拠することなく、ほのかな香ばしさと風味を与える。
花椒籽
籐椒粉
五香粉
八角
桂皮
茴香
香菜
蕃茄
- Mapo Tofu Spices -(蠔油)Hao You:Oyster Sauces.png
「牡蠣油」
ハオユー 「蕃茄」
トマト
麻婆飯・麻婆丼
麻婆麺
麻婆春雨
螞蟻上樹
螞蟻上樹(蚂蚁上树:マーイーシャンシュー)は、日本の家庭料理でも作られる『麻婆春雨』の原型料理であり、春雨と挽肉を炒めて、豆板醤で辛く味付けした四川料理の一つである。
料理名の由来は、春雨の表面に挽肉の粒が絡みつき、アリが枝を這うように見えることにちなむ。 具材は、タレで煮込んだ挽肉(主に牛肉)を春雨の上にのせ、その他に米酢、醤油、ごま油、ネギ、にんにく、生姜、チリソースなどがある。
麻婆春雨
麻婆茄子
魚香茄子(四川)
魚香茄子(鱼香茄子:ユィシャン・チェズ)は、日本の家庭料理でも作られる『麻婆茄子』の原型料理であり、四川料理の主要な伝統的料理の一つである。
「魚香」を冠する料理名だが、魚に由来するものではなく、赤唐辛子の塩漬け(泡红辣椒)、ネギ、ショウガ、ニンニク、砂糖、塩、醤油などの調味料によるものである。 この調理法は、四川省独特の魚の調理法に端を発し、現在では四川料理に広く用いられており、塩味、酸味、甘味、辛味、香りを持ち合わせた新鮮で豊かな風味を特徴としている。
港式魚香茄子(香港)
港式魚香茄子(港式鱼香茄子:ガァンシィー・ユィシャン・チェズ)は、香港でアレンジされた魚香茄子である。
従来、「魚香」(ユィシャン)とは四川料理の調理法を指しているため、魚香茄子は魚香の調理法を用いて豚挽肉と茄子を調理したものであり、実際には具材に魚は使っていない。 しかし、広東省や香港では文字通り、魚の香りを際立たせるために、鹹魚(広東語:ハムユイ/塩漬した魚)を刻んだものを加え、塩辛い風味を楽しむ。 また、辛味は餡ではなく唐辛子を用いる。
麻婆茄子
その他の豆腐料理
- 家常豆腐(ジア・チャン・ドウフ)揚げ豆腐と豚肉の家庭風辛子煮
- 魚香豆腐(ユィシャン・ドウフ)
- 香菇肉末豆腐(シャンクー・ロウモー・ドウフ)
- 石锅老豆腐(シーグゥオ・ラオドウフ)
- 豆花牛柳(ドウホァー・ニウリュウ)
- 镜箱豆腐(ジン・シャン・ドウフ)
- 麻辣鸭血臭豆腐(マーラー・ヤーシュエ・チョウドウフ)
- 蟹黄豆腐(シエファン・ドウフ)上海蟹のミソと豆腐の煮込み
「鏡箱豆腐」
(江蘇省・無錫市)
ギャラリー
- Japanese Mabo Dofu -(陳麻婆豆腐)Keitokuchin in Yokohama Chinatown, Kanagawa, established in 1892.png
「陳麻婆豆腐」
四川マーボー豆腐(本場の辛さ)
景徳鎮 本館
(神奈川・横浜中華街) - Japanese Mabo Dofu -(麻婆豆腐)Keitokuchin in Yokohama Chinatown, Kanagawa, established in 1892.png
「麻婆豆腐」
マーボー豆腐(普通の辛さ)
景徳鎮 本館
(神奈川・横浜中華街)