「大日本帝国陸軍の基本だし」の版間の差分

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これらは投入後、出汁を抽出してから濾して取り除くことなく料理に混合される。
 
これらは投入後、出汁を抽出してから濾して取り除くことなく料理に混合される。
 
海軍では「鯉こく」など素材から出汁が出る料理には『[[大日本帝国海軍の基本だし|煮出汁]]』すら用いないが、陸軍では「鯉こく」などにも削り節が加えられる。
 
海軍では「鯉こく」など素材から出汁が出る料理には『[[大日本帝国海軍の基本だし|煮出汁]]』すら用いないが、陸軍では「鯉こく」などにも削り節が加えられる。
削り節の用途に和洋の隔たりはなく、味噌汁、またシチューやカレー汁など様々なレシピに用いられる。
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削り節の用途に和洋の隔たりはなく、味噌汁、またシチューなど様々なレシピに用いられる。
  
 
※削り節の用途の一例として「[[#シチュー|シチュー]]」を参考として記載する。
 
※削り節の用途の一例として「[[#シチュー|シチュー]]」を参考として記載する。

2022年4月6日 (水) 14:08時点における版

大日本帝国陸軍の基本だし

大日本帝国海軍の基本だし(Basic soup stock of the Imperial Japanese Army)は、大日本帝国陸軍における料理の基本出汁である。

概要説明

スープ台

陸軍における基本の出汁に『スープ台』というものがある。 獣肉類の骨を使った『骨スープ』が「スープ台」と称され、料理の出汁に用いられる。 材料の骨に特に指定はなく、海軍のように西洋料理、和食料理で出汁を使い分けるということは見られない。 西洋料理を先んじて取り入れた海軍は極端に洋風レシピが多く、一方で陸軍の洋風レシピは極端に少ない。 その中でシチューやカレー(カレー汁)という唯一ポピュラーな響きの料理があるが、これらは味噌汁と同じ「汁物」に分類されている。 これらにこそ「骨スープ」が使われそうだが、シチューには「削り節」が使われ、カレー汁には出汁は全く使用されず塩のみである。 スープ台は数あるレシピの中で共通として使われるものだが、レシピ全体から見るとそれも「ある程度」でしかない。

煮出し汁

陸軍における和の食材を使った基本の出汁に『煮出し汁』というものがある。 海軍では日本料理に用いる昆布と鰹節を材料とした『煮出汁』があるがそれと異なる。 材料は「削り節」か「煮干粉」で昆布はほぼ用いられない。 昆布が使われるレシピは少なく、その場合は「刻み昆布」が使われ、出汁を抽出してから引き出すことはなく、具の一つとして調理される。 煮出し汁は「スープ台」と同様に数あるレシピの中で共通として使われるものだが、レシピ全体から見るとそれも「ある程度」でしかない。 煮出し汁は主に「削り節」さもなくば「煮干粉」を水で煮出したものである。 これに味噌を溶いて汁物のメインともいえる「味噌汁」に使われそうだが「削り節」が使われる。 煮出し汁のみのレシピは存在しない。

味噌汁の備考に「煮出し用」として用いる場合の文脈があるので参考として合わせて記載する。

削り節

前記した「スープ台」や「煮出し汁」から群を抜き、一番多用されるのが『削り節』である。 レシピの表記例は『削り節:〇グラム(又は煮干粉:〇グラム)』となっていていることから、基本的には鰹の削り節であり、煮干粉はその代用といったところだろう。 両方を用いるようなレシピは見受けられない。 これらは投入後、出汁を抽出してから濾して取り除くことなく料理に混合される。 海軍では「鯉こく」など素材から出汁が出る料理には『煮出汁』すら用いないが、陸軍では「鯉こく」などにも削り節が加えられる。 削り節の用途に和洋の隔たりはなく、味噌汁、またシチューなど様々なレシピに用いられる。

※削り節の用途の一例として「シチュー」を参考として記載する。

味の素

削り節と並んで比較的多く用いられるのが『味の素』である。 スープ台のように出汁に併用して添加される場合もあるが、出汁の一種として単独で用いられものが多くある。 単独の場合は、塩、醤油、味噌のみで調味されたものに添加され、スープ台や煮出し汁、削り節は用いない。

スープ台

骨スープ

骨スープ

材料(一〇人分)

  • 牛、または羊、豚、鶏骨:二・五キログラム
  • 水:九リットル
  • 玉葱:二〇〇グラム
  • 西洋人参:一五〇グラム
  • 食塩:二三グラム
  • 味の素:少量

準備

  • イ、骨は冷水にて洗い、大きなものは砕きて水と共に鍋に入れ、食塩を加えて約三〇分間そのままとなし置く。
  • ロ、玉葱は皮を去り二つ割りとなし、人参は薄く木口切りとなし置く。

調理

骨を入れたる鍋に玉葱および人参を入れ、急に沸騰せしめたるのち上面に浮ぶ泡を去り、文火にて約三時間(三・六リットルとなるまで)煮詰め、水篩にて濾してその汁を取り、上面に浮ぶ泡および脂肪を掬い去り、食塩および味の素にて調味す。

備考

普通これをスープ台と称し、次のごとく種種の中身を入れて用う。 スープ台はアルミまたは琺瑯質のものを使用するを可とす。


『軍隊調理法』第二章 調理法(第一〇 特別食 其の二 流動食 一六)

煮出し汁

味噌汁

  • 熱量:一八九、カロリー
  • 蛋白質:一七・九二グラム

材料(一人分)

  • 豆腐:八〇グラム
  • 削り節:四グラム(又は煮干粉:二グラム)
  • 葱:一〇〇グラム
  • 味噌:六〇グラム(又は粉味噌:三〇グラム)

調理

  • イ、豆腐は細かく、葱は三センチ位に切り、摺り味噌(又は粉味噌)はそのまま、粒味噌は肉挽き器にかけ置く。
  • ロ、鍋に約三五〇ミリリットルの水を煮立て、削り節と味噌を入れて攪拌し、一沸しして葱、豆腐を加え、さらに一沸しして火よりおろす。

備考

  • イ、汁の実は二種以内を可とし、豆もやし、葱、豆腐、若布、麩、(素麺のごとき早く煮えるものを用うべし)煮え難きものはあらかじめ水煮したるのち味噌を入れるべし。
  • ロ、摺り味噌よりも粒味噌を使用前に摺り潰して用うる方が風味よし。
  • ハ、味噌汁は出来上りを食するごとく注意すべし、それがためには、一鍋につき味噌量と水量とはあらかじめよく計り、濃淡の修正をなさざること肝要にして、濃い目に立て、あとより湯を注ぐとも、淡目に立てて味噌を追加せざるよう注意すべし。
  • ニ、煮出し用として煮干粉又は削り節のほか煮干鰯を用うるときは、水から入れて充分に味を出すことと同時に煮沸により臭味をのぞくこと必要なり。
  • ホ、葉葱、小松菜のごとき葉菜、又は豆腐のごときものは、味噌汁を仕立ててのち、ざっと煮るをよしとす。
  • ヘ、味噌汁は温かきを尊しとし、摂氏六〇度以上にて供するよう注意すべし。


『軍隊調理法』第二章 調理法(第二 汁物・一)

削り節

シチュー

  • 熱量:四四三、カロリー
  • 蛋白質:四五・五六グラム

材料(一人分)

  • 開き鱈(又は塩鮭、塩豚、牛肉、貝類):五〇グラム
  • 削り節:四グラム
  • 馬鈴薯:一〇〇グラム
  • 玉葱:八〇グラム
  • 人参:二〇グラム
  • 小麦粉:〇グラム
  • ラード:一〇グラム
  • 食塩:少量
  • 胡椒:少量

準備

  • イ、開き鱈は庖刀にて切り得る程度に水に浸しおき、一・五センチ角に切り置く。
  • ロ、馬鈴薯は乱切りとなし、玉葱は粗き千切りとし、人参は木口切りとなし置く。
  • ハ、ラードを煮立て、小麦粉を投じて攪拌し、油粉捏(ルー)を造り置く。

調理

鍋に約三五〇ミリットルの水と鱈を入れてしばらく煮沸してその塩味を見て、鹹きときは煮汁を捨ててさらに水を加えて塩梅し、これに人参を加え、のち馬鈴薯、玉葱を入れ、火の通るまで煮立て、塩味足らざるときは食塩を加えて調味し、胡椒を振り、油粉捏を流し込み、攪拌して煮上ぐ。

備考

  • イ、一般にシチューは堅き肉その他粗悪の材料を用いて長く煮続けて、軟かに、かつ味よくするを要旨とす。
  • ロ、本調理はパンの副食に適す。


『軍隊調理法』第二章 調理法(第二 汁物・二二)

関連項目

参考文献

  • 『軍隊調理法』:第二章 調理法(第一〇 特別食 其の二 流動食 一六)
  • 『軍隊調理法』:第二章 調理法(第二 汁物・一)