「アイスランドの獣鳥類」の版間の差分
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2024年7月30日 (火) 20:17時点における版
アイスランドの獣鳥類(Dýr og fuglar)は、アイスランドの家畜および野生生物を含め、主に食用として利用可能なものである。
概要
家畜類
鯨偶蹄目
※哺乳綱(ほにゅうこう)・鯨偶蹄目(げいぐうていもく)。これらの家畜類の中でウシを除き、ヒツジ、ヤギたちは野生同様の生活をしている。ヒツジを食する諸外国は多いが、アイスランドのヒツジは海岸沿いの海藻類、野草類、薬草類を餌とするため、味に大きな違いが出る。これはアイスランドが自負するところで訪れた人々を納得させる。
奇蹄目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
---|---|---|---|
(Hestur) (Íslenski hesturinn) |
アイスランディック・ホース (Equus caballus) |
ウマ科ウマ属。馬肉は塩漬けが伝統的である。他にはソーセジに使われる。伝統的な食材だが日常的ではない。 |
※哺乳綱・奇蹄目(きていもく)。アイスランドでは、観光地を騎乗しながら景観を楽しむツアーも多く行っている。西部のレイクホルトにあるトマト農園では乗馬体験や古典的な服装をした騎手たちのショーが見学できる。
家禽類
キジ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
---|---|---|---|
155px | (Nytjahænsni) (Landnámshænsn) |
アイスランディック・チキン (Gallus gallus domesticus) |
キジ科ヤケイ属。ニワトリの学名は基本的に同じだが、DNAの分析で古い血統であることが証明されている。 |
※鳥綱(ちょうこう)・キジ目。アイスランドにおける養鶏は古いものの、農場や家庭で行われていたもので商業的規模ではない。食肉として屠殺するより、持続的に栄養摂取が可能な鶏卵の採取が合理的であったと思われる。現に “ アイスランドの地鶏 ” としてレストランで供されることは少なく、観光客もそれを目的としない。近年、養鶏場を拡大している企業も同種のニワトリの鶏卵を全国的に通年で出荷することを目的としている。鶏卵は通年で入手しやすいが、海鳥の卵が陳列されるシーズンになると存在感は薄くなる。アイスランドの人々は朝食に目玉焼きを習慣的に食べるということはなく、肉はヒツジが筆頭となる。アイスランド料理の食材において、ニワトリは影が薄い存在である。
カモ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
---|---|---|---|
(Aligæsir) |
ヨーロッパガチョウ (Anser anser var. domesticus) |
カモ科マガン属。野生のハイイロガンを品種改良したもので、アジアの一般的なガチョウとは学名も異なる。 | |
155px | (Önd) |
アヒル (Anas platyrhynchos domesticus) |
カモ科マガモ属。 |
※鳥綱・カモ目。1609年に出版されたアイスランドの学者であるアルングリムル・ヨンソン(Arngrímur Jónsson lærði:1568年 - 1648年6月27日)の著書『クリモガイア』(Crymogæa)の中で彼は「16世紀末の少し前には、個々の農場にガチョウや自家用ガチョウがいたが、一般にアイスランド人は鶏以外の家禽を知らず、家禽は鶏だけだ」と述べている。 アイスランドにおける養鶏の歴史によれば、1958年から1964年にかけて、アヒル農場が運営され、国内のアヒルの数が大幅に増加した。 これらのアヒルは、デンマーク経由で移入した中国の「北京ダッグ」(北京鸭:ベイジンヤー)の卵から孵化したものである。 その当時、ガチョウやアヒルにせよ、農場があった事実や鳥の数が以前より増えたという事実だけで、食肉や卵として一般的に流通するほどの生産性はない。 今日でも採卵だけを目的として飼育する農場や食肉と採卵の両方で飼育する農場はあるが、どちらも小規模で自家消費か地域密着型で販売している。 他では家庭で子供と一緒に世話をして飼育する人々もいるが、採卵が主である。 アイスランド国民は、グリム童話「みにくいあひるの子」を知っているため、アヒルの知名度は高いが、食材としては重要視されていない。 2015年秋のスウェーデン食糧庁の報告書によると、アイスランド国内のアヒルの数は794羽となっている。 これらの家禽を使った料理は、農場が運営するコテージのディナーや併設された小さなレストランで供されることが多い。
野生哺乳類
鯨偶蹄目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
---|---|---|---|
(Hreindýr) |
トナカイ (Rangifer tarandus) |
シカ科トナカイ属。アイスランドでは毎年、生態に影響がない範囲で、個体の年齢、性別、または地域に応じて頭数を決定して狩猟を許可している。塩漬けが定番。伝統的な食材だが日常的ではない。 |
※哺乳綱・鯨偶蹄目。
食肉目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
---|---|---|---|
(Hvítabirnir) |
ホッキョクグマ (Ursus maritimus) |
クマ科クマ属。稀に流氷に乗って訪れる。アイスランドでは保護する方針だが、陸上して人や家畜に危険が及ぶ場合は処置される。通常は生息していため、一般的な狩猟や食材の対象ではない。 |
※哺乳綱・食肉目。ホッキョクグマは氷上生活の他、泳ぐことにも長けている。生息域に近いグリーンランドでは、陸上して人々の生活圏に出没して通報されることもあり、適正な処置がされた後、肉は自治体の市場や集落の役場などで販売される。日本でも古くから熊肉は狩猟食材として利用されている。
野鳥類
カモ目
※アイスランドでは、ガンカモ類は狩猟期間中だからといって多くのレストランで供されることはなく、あくまで狩猟者や愛好家たちの間で食されている。 英語のメニュー表記は、ガンはグース(Goose)、カモはダック(Duck)となるが、カモの場合は家禽のガチョウも含まれる場合もある。 フードコートやファーストフードなどに通年あるものは家禽の輸入肉がほとんどである。 大体は骨付きのローストであるため、骨を見れば野鳥であるかを判断できる。 家禽は歩行が主であるため骨が太く、野鳥は飛行するため骨はシャープである。 また、日本で “ 海ガモ ” と総称される狩猟鳥のスズガモ(ハジロ属)、キンクロハジロ(ハジロ属)、ホシハジロ(ハジロ属)、クロガモ(クロガモ属)などは、ハンターに味が好まれないため、日本では狩猟の標的とされることは少ない。その要因は魚が主な餌であるため、肉に魚の風味を持つことである。これは海ガモに限らず、海鳥類の特徴である。
チドリ目
※アイスランドには、フランスのジビエ料理で “ ベカス ”(仏:Bécasse)として珍重されるチドリ目シギ科のシギ類が渡来するが狩猟対象ではない。アイスランドは美味とされる渡り鳥の中継地と繁殖地であり、その多くがここから再び飛び立ち、美食家たちの舌を魅了している。
ミズナギドリ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
---|---|---|---|
(Fýll) |
フルマカモメ (Fulmarus glacialis) |
ミズナギドリ科フルマカモメ属。狩猟期間は9月1日~3月31日。 |
カツオドリ目
キジ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
---|---|---|---|
(Rjúpa) |
ライチョウ (Lagopus muta) |
キジ科ライチョウ属。狩猟期間は10月15日~12月22日。美味な鳥として広く知られる。アイスランドでは伝統的なクリスマス料理の食材。 |
スズメ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
---|---|---|---|
(Hrafn) |
ワタリガラス (Corvus corax) |
カラス科カラス属。通年で狩猟が許されている。一般的なカラスは忌み嫌われるが、それと反して清いものとされる。 |
海鳥類
※アイスランドで生き抜くためのに培われてきた伝統的な「ニシツノメドリ狩り」を体験できる催しもある。 この場合は狩りの成果より、あくまで体験を目的とし、より安全な場所で行われ、子供たちも参加する。 断崖での狩猟は危険性(突風や空中の鳥を夢中に追って転落など)が高く、熟練のスキルを必要とする職人たちの仕事場である。また、海鳥類は、魚を餌とするため、肉は魚の風味を持つのが特徴である。そのため、肉や脂肪の成分が通常とは異なり、健康に良いとされている。アイスランドに訪れる人々にとって海鳥料理は一つの目玉であり、魚の味がすることに驚くものの、その珍しさを味わい、気嫌いされることは少ない。
卵類
※アイスランドの狩猟における法律を厳守さえすれば、銃器を用いる狩猟に比べて、採卵に関しては緩やかで免許も必要としない。ただ、採取期間は決められている。海鳥の場合、そのほとんどが断崖絶壁にあるため、今日では素人が行うことはない。一般の人々にとって危険をともなわずに採取できるのは、草むらなどに産卵する野鳥類だが、これにはルールがあり、巣にある卵を全て取ってはならず、一つの巣に対して必ずある程度の数を残すという規則がある。
海棲哺乳類
鯨類
※アイスランドのクジラ肉が高く評価されているのは、ナガスクジラ属の種であり、ステーキ、刺身においては上質な肉を使っている。 日本でも美味とされる種だが、これほどの品質は鯨料理専門店でも食せるか食せないかである。 日本は捕鯨国であるが “ クジラ ” という名称で総括されており、種の表記は曖昧で種に対する庶民の意識も薄く、今日では大半の人々は刺身用であっても黒ずんだ肉を思い浮かべ、戦後の人々は昭和の給食やクジラカツなどを懐かしい味として回想する。 全ての種のクジラが美味であるかといえば、そうでもなく、これは安直にクジラが美味いか不味いかを左右、決定する要因にもなっている。
鰭脚類
※北アイスランド西部に位置するクヴァムスタンギには、アザラシ博物館(Selasetur Íslands)がある。アイスランドでは、アザラシの狩猟を禁止した。しかし、商業的な漁でなければ、個人でも申請さえすれば狩猟が可能となった。これによって乱獲を防ぎ、伝統的な食材として利用することは守られている。入植当時は重要な食糧源であったが、今日では(狩猟を禁止する以前から)アイスランドの伝統的な催しの食材でしか使われていない。日本の北海道に生息するアザラシやトドは狩猟対象であり、観光客向けにジンギスカン風など思いつく限りの調理で供する店もあるが、道民の一般的な食材ではない。観光客には土産品として、一風変わった缶詰(カレーや大和煮など)の方が人気がある。
加工品
画像 | 現地名 | 一般名 | |
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サルタズ・ホーサキョット (Saltað Hrossakjöt) |
馬肉の塩漬け。 | ||
レイクトゥル・ランティ (Reyktur Lundi) |
スモークド・パフィン (Smoked Puffin) |
ニシツノメドリの燻製。古くから食糧を保存する伝統食で狩猟期間外でも通年でレストランで提供している。一羽を丸のごと出すことはなく、狩猟期間中でも生鮮の肉を使うことはほとんどない。 | |
スール・クヴァルゥル (Súr Hvalur) |
クヴァルゥルは “ クジラの脂身 ” の意味。日本の鯨料理では、畝須(うねす)と呼ばれる美味な部位である。それをミーサに漬けたスールマートゥルの一種。 | ||
サルタズ・セルスピック (Saltað Selspik) |
アザラシの皮の塩漬け。セルスピックは “ アザラシの皮 ” の意味。 | ||
サルタズ・セルシュレイファル (Saltað Selshreifar) |
アザラシのヒレの塩漬け。 | ||
スーリル・セルシュレイファル (Súrir Selshreifar) |
アザラシのヒレをミーサに漬けたもの。スールマートゥルの一種。 |
ギャラリー
※以下は、アイスランド料理の一例である。