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2023年3月30日 (木) 10:29時点における版
苏波汤(スーボータン)は、ロシアのボルシチを起源とし、中国の最北端および最東端に位置する黒竜江省(こくりゅうこうしょう)の省都であるハルビン市で発展した定番のスープである。
ハルビン市
黒竜江省は、ロシア極東連邦管区の巨大都市であるウラジオストクと隣接しており、省都ハルビン市の街並みは現在でもロシアの雰囲気を色濃く残している。 この街は金・清の両王朝の発祥の地であり、のちに「東洋のモスクワ」と形容された。 ハルピンのランドマークといえば、1924年にロシア人が設計したショッピングストリート「中央街」、旧ソ連の影響を受けた「スターリン公園」、ロシア正教会の「聖ソフィア大聖堂」など、大小さまざまなロシア様式の建築物が数え切れないほどある。 中国の少数民族には、中国に逃れてきたロシア人や旧ソ連の移民の子孫であるロシア系民族が含まれており、ハルピンはその子孫の主要な居住地の一つである。
歴史的背景
1920年代、中東鉄道沿線のロシア駐在のロシア貴族とともに、ハルビンとその周辺地域にボルシチをもたらした。 同時期に、ハバロフスク、ウラジオストク、ハルビンへと渡った山東省の料理人の中には、ロシア租界やロシア人駐在員が集まる場所で、このボルシチを含むロシア風西洋料理の調理法を学んだ者もいた。
だが、ボルシチの特徴的な野菜であるテーブルビート(红菜根)は、ハルビン周辺では生産されていなかった。 しかし、この頃すでに中国ではトマトが大流行していたため、当時のロシア料理人は、テーブルビートの酸味をトマトで代用した。 そして、次第に红菜汤が現地のスタイルに合わせた酸味のある苏泊汤(スーボータン)になったのである。
語源
ハルビンでは、「苏波」(スープ)、「列巴」(パン)、「布拉吉」(ドレス)、「格瓦斯」(クワス)などといったロシア語の発音を借用した方言がある。 これらの言葉の中には、中国語の発音と同義になったものや固有名詞そのものになったものもある。
苏波汤の「苏波」(スーボー)はロシア語のスープの音訳に由来し、「汤」(タン)は中国ではスープを意味する。 よって、直訳では “ スープ スープ ” という重複した意味になってしまうが、これは日本において韓国の鍋料理(チゲ)をチゲ鍋(ちげなべ)と呼び、 “ 鍋 鍋 ” は正しくないにせよ、庶民の間では意味合いとして伝わりやすく、一般的な響きとして定着した経緯と同じである。
特徴
夏から秋にかけて、ハルビンの人々の多くはロシア人が好んだ苏波汤を作る。 どこの家庭でも作れ、漢民族も多いため、豚肉を牛骨や羊肉に少しずつ置き換えていった。 最もシンプルなのは、キャベツ(包心菜:東北地方では洋白菜ともいう)、ジャガイモ、トマトで作る植物性の素材を主体とした素汤(スータン)の苏波汤である。
メニュー表記
红菜汤
1925年に、马尔斯茶食店として創業した「华梅西餐厅」は、上海の「雅克红房子西餐厅」、北京の「马克西姆餐厅」、天津の「天津起士林大饭店」とともに、中国4大洋食レストランの一つとして知られている。
华梅西餐厅は、ハルビンを訪れる際に必ず立ち寄るべきグルメスポットとなっており、メニューには「红菜汤」(ホンツァイタン)と表記されている。
红菜汤は必食アイテムになっている。
乌克兰红菜汤
莫斯科红菜汤
俄罗斯红菜汤
苏泊汤
1979年に創業した「张飞扒肉」は、八角、シナモン、ナツメグなどの香辛料を使い、皮つきの豚バラ肉(三枚肉)を煮込んだハルビンの名物「扒肉」(バーロウ)を提供する店である。
ハルビンには “ 开奔驰,吃小吃 ” (メルセデス・ベンツを走らせ、小吃を食べる)という言葉があり、ピーク時にはベンツなどの高級外車が路肩に駐車され、仮設テーブルが用意されるほど人気がある。
苏泊汤(スーボータン)は “ 苏波汤 ” と全く同じ意味であり、一般的には最もポピュラーな呼称である。
酸辣汤
ハルビンの伝統的な食べ物である春餅(シュンビン)を提供する「老昌春饼」のメニュー表記は「酸辣汤」ではあるものの、地元客からは “ 苏泊汤 ” と呼ばれている。
これは、多少の辛味と酸味がある苏泊汤であり、明らかに一般的な酸辣汤とは異なる。
酸辣汤にはトマト(西红柿)が使われる場合もあるため、省外から来客した人々によって西红柿酸辣汤として紹介されることもあるが、それは極少数であり、ほとんどが苏泊汤として認識している。