「レイクトゥル・ルンティ」の版間の差分
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ニシツノメドリ(学名:''Fratercula arctica'')は、チドリ目ウミスズメ科ツノメドリ属の海鳥である。 | ニシツノメドリ(学名:''Fratercula arctica'')は、チドリ目ウミスズメ科ツノメドリ属の海鳥である。 | ||
アイスランド語で ルンティ(Lundi)と呼ばれる。 | アイスランド語で ルンティ(Lundi)と呼ばれる。 | ||
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愛嬌のある容姿から国のキャラクターとして扱われることが多く、鳥類学者や観光客の野鳥観察としても人気が高い。 | 愛嬌のある容姿から国のキャラクターとして扱われることが多く、鳥類学者や観光客の野鳥観察としても人気が高い。 | ||
海辺の断崖とその周辺に営巣し、小魚や小型の甲殻類を採餌する。 | 海辺の断崖とその周辺に営巣し、小魚や小型の甲殻類を採餌する。 | ||
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=== 伝統利用 === | === 伝統利用 === | ||
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※卵は保護増殖のため、古来のように食用とされることはない。 | ※卵は保護増殖のため、古来のように食用とされることはない。 | ||
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鳥の群れが円を描いて飛び、崖の上を風に逆らって漂う習性を利用して捕らえる。 | 鳥の群れが円を描いて飛び、崖の上を風に逆らって漂う習性を利用して捕らえる。 | ||
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今日でも父親と一緒に短い猟具で行う子供たちもいる。 | 今日でも父親と一緒に短い猟具で行う子供たちもいる。 | ||
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− | + | ニシツノメドリの肉は、アイスランド語で(ルンタキョット:Lundakjöt)と呼ばれる。 | |
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+ | また、燻製加工を生業とする燻製師もいる。 | ||
+ | 伝統的な燻製には、シラカバの一種であるヨーロッパダケカンバ(ビルキ:Birki)が使われる。 | ||
+ | 狩猟鳥は血抜きを行わないため、生鮮の状態から身の色は濃い。 | ||
+ | 野趣ある野生的な味わいをもち、海外では “ アイスランドのジビエ ” と形容される。 | ||
+ | ニシツノメドリの肉、および燻製などの加工食品の国外輸出は禁じられているため、アイスランドでしか味わえない珍味である。 | ||
+ | === 味の特徴 === | ||
+ | ニシツノメドリの肉は脂肪分がなく、通常の加熱調理では硬くパサつきやすいが、低温で燻製することでレアのように軟らかく、しっとりとした味わいに仕上げている。 | ||
+ | また、海鳥類は主に魚を餌とするため、肉は魚の風味を持つのが特徴である。そのため、肉や脂肪の成分が通常とは異なり、健康に良いとされている。アイスランドを訪れる人々にとって海鳥料理は一つの目玉であり、魚の風味がすることに驚くものの、その珍しさを味わい、気嫌いされることは少ない。 | ||
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2024年8月8日 (木) 12:32時点における最新版
レイクトゥル・ルンティ(Reyktur Lundi)は、アイスランドに生息するニシツノメドリを燻製にしたもので代表的な伝統料理の一つである。
ニシツノメドリ
ニシツノメドリ(学名:Fratercula arctica)は、チドリ目ウミスズメ科ツノメドリ属の海鳥である。 アイスランド語で ルンティ(Lundi)と呼ばれる。 ウミスズメ科に属する海鳥類は、スヴァトフグル(Svartfugl)と総称されるが、料理や食材の名称では他の海鳥類と明らかに分けられる。
愛嬌のある容姿から国のキャラクターとして扱われることが多く、鳥類学者や観光客の野鳥観察としても人気が高い。 海辺の断崖とその周辺に営巣し、小魚や小型の甲殻類を採餌する。 クチバシに小魚を器用に並べることでも知られる。
伝統利用
アイスランドは寒冷地であり、自然に生息する生物を摂取、利用することは人間の生命維持として歴史的に不可欠であった。 特に冬に差し迫る時期から春の終わりまでは食糧が渇望する時期であったため、ニシツノメドリは重要な食糧源であり、伝統食材の一つとなっている。 ニシツノメドリは古くは生食、塩漬け、燻製や乾物で食され、卵は断崖からロープで降りて命がけで採取し、貴重なタンパク源とした。 また、羽は防寒寝具に有効利用された。 今日では燻製が最も一般的である。 アイスランドの海鳥料理の代表的格となっており、訪れる観光客や食通の必食とされている。
※卵は保護増殖のため、古来のように食用とされることはない。 海鳥の卵ではウミガラスが代表的である。
狩猟法
ニシツノメドリをはじめとする海鳥には散弾銃などの銃器を使用することは禁じられている。 狩猟期間は 9月1日~5月10日まで。 長い竿状で先端がV字に分かれたラクロスのラケットのような古典的な猟具で捕獲する。 この手法はフェロー諸島(デンマーク自治領)から伝わったとされる。 鳥の群れが円を描いて飛び、崖の上を風に逆らって漂う習性を利用して捕らえる。 古くは少年たちも捕まえていた。 今日でも父親と一緒に短い猟具で行う子供たちもいる。
ルンティ狩りは主にヴェストマン諸島とグリムセイ島で行われてきたが深刻な人口の減少と共に減少傾向にある。 アイスランドで生き抜くためのに培われてきた伝統的なルンティ狩りを体験できる催しを行っている自治体やサークルもある。 幼いころから当たり前に食している食材の歴史と知識に関する体験学習とリクリエーションの一環であり、海外から希望して参加する大人たちもいる。 この場合は狩りの成果より、あくまで安全な場所で行われる。 断崖での狩猟は危険性(突風や空中の鳥を夢中に追って転落など)が高く、熟練のスキルを必要とする職人たちの仕事場である。
ニシツノメドリの肉
ニシツノメドリの肉は、アイスランド語で(ルンタキョット:Lundakjöt)と呼ばれる。 キョット(Kjöt)は “ 肉 ” の意味である。 生鮮肉は個人の狩猟愛好家、もしくはレストラン運営者、食品販売店および会社などの組織的な狩猟で得られるもので、一般的に流通することは少なく、そのほとんどは燻製加工され、販売される。
アイスランドの先人たちは生きる術として食糧の確保と保存に知恵を絞ってきた。 燻製もその伝統の一つである。 各地の小さなローカルマーケット(食品や雑貨の販売店)では、屋外に設けた燻製小屋で加工した自家製が多い。 また、燻製加工を生業とする燻製師もいる。 伝統的な燻製には、シラカバの一種であるヨーロッパダケカンバ(ビルキ:Birki)が使われる。
狩猟鳥は血抜きを行わないため、生鮮の状態から身の色は濃い。 野趣ある野生的な味わいをもち、海外では “ アイスランドのジビエ ” と形容される。 ニシツノメドリの肉、および燻製などの加工食品の国外輸出は禁じられているため、アイスランドでしか味わえない珍味である。
味の特徴
ニシツノメドリの肉は脂肪分がなく、通常の加熱調理では硬くパサつきやすいが、低温で燻製することでレアのように軟らかく、しっとりとした味わいに仕上げている。 また、海鳥類は主に魚を餌とするため、肉は魚の風味を持つのが特徴である。そのため、肉や脂肪の成分が通常とは異なり、健康に良いとされている。アイスランドを訪れる人々にとって海鳥料理は一つの目玉であり、魚の風味がすることに驚くものの、その珍しさを味わい、気嫌いされることは少ない。
料理
レストランでも燻製が一般的である。
ギャラリー
- レイクトゥル・ルンティ:ニシツノメドリの燻製。
- レイクトゥル・ルンティ・メズ・ヒンドゥベルヤエディキ:ラズベリービネガー添え。
- レイクトゥル・ルンティ・メズ・シネップソゥス:マスタードソース添え。
- レイクトゥル・ルンティ・メズ・ブラべルヤソゥス:ブルーベリーソース添え。
- レイクトゥル・ルンティ・メズ・ブレンニヴィンズソゥス:ブレンニヴィンソース添え。
- レイクトゥル・ルンティ・メズ・マルトゥソゥス:モルトソース添え。
- Icelandic Cuisine - Reyktur Lundi með brennivínssósu.png
メズ・ブレンニヴィンズソゥス
(Með brennivínssósu)