トマトちゃんこ
トマトちゃんこ(Tomato Chanko Nabe)は、2018年(平成30年)9月25日まで日本相撲協会所属の相撲部屋として存在した名門「貴乃花部屋」(東京都中野区)において、力士の栄養バランスを配慮して考案されたトマト味の「ちゃんこ鍋」である。
概略
トマトちゃんこは、相撲界の長い歴史において、また各相撲部屋の伝統的ちゃんこ鍋の中では、近代的なものである。 貴乃花部屋のトマトちゃんこは、昆布・鰹節ベースの出汁に、炒めたニンニクや玉ネギが入ったトマトソースを加え鶏肉・豚肉・野菜などを煮込む。
当時のちゃんこ長の嵐望(らんぼー)は「チーズとの相性がよく、モッツァレラチーズを鍋に入れたり、粉チーズを振りかけると最高。シメには細いパスタも合うし、ご飯を入れてリゾットにしても美味しい」と語っている。
嵐望は、部屋最古参(二子山部屋と藤島部屋が合併する前に入門した力士で最後まで現役を続けたのは嵐望)として、ちゃんこ長を務めていたが、2013年5月場所を前にして40歳で現役引退を表明した。
現在、「トマトちゃんこ」は多くの相撲部屋でも取り入れられ、ちゃんこ屋でも提供されている。 また、相撲界の伝統的食文化である「ちゃんこ」は、プロレス業界でも比較的初期からレスラーの食事として取り入れられたことで知られているが、その後プロレスのみならずパンクラスなど他の格闘技界でも導入され、同様にトマトちゃんこも作られている。
貴乃花部屋トマトちゃんこ(4~6人分)
具材
- キャベツ:1/4個
- ざく切り長ネギ:1/4本
- ざく切りニラ:1/2束
- モヤシ:1袋
- シイタケ:8個
- シメジ:2パック
- エノキ:2パック
- マイタケ:2パック
- エリンギ:2パック
- 豚バラ薄切り:200g
- 鶏もも肉:250g
- ボイルホタテ:6~8個
- エビ:6~8個
- イカ:160g
- タコ足:2本
- アサリ:6~8個
※具材はお好みで
(1) トマトスープ
- ホールトマト:350~400g(手でつぶしておく)
- オリーブ油:大さじ2
- 赤唐辛子:1本
- 小口切りニンニク:2片分
- みじん切りタマネギ:1玉分
- みじん切り固形コンソメ:2個
- バター:20g
(2) だし
- 昆布カツオだし:1.5~2リットル
- 酒:1/2カップ
- みりん:1/2カップ
- 塩:小さじ1~1.5
作り方
手順1
フライパンにニンニク・赤唐辛子・オリーブ油を入れ火にかけ香りを出す。 タマネギを加えアメ色になるまでよく炒め、ホールトマト・コンソメ・バターを加え軽く煮詰める。
手順2
(1) に (2) を加え鍋用スープにする。
手順3
具材を入れて煮込む。
佐渡ヶ嶽部屋
佐渡ヶ嶽部屋(さどがたけべや)では、ブルガリア出身の琴欧洲(現・鳴戸部屋親方)が 2002年(平成14年)秋に入門してからトマトちゃんこが導入された。
琴欧洲は、2014年1月7日に日本国籍を取得し、欧州出身力士としては初となる日本への帰化を果たした。 2014年10月4日に両国国技館において、引退相撲・断髪式が行われ、2015年2月12日、年寄・鳴戸を襲名。 2017年4月1日に、自身の内弟子2人を連れて佐渡ヶ嶽部屋から独立し、鳴戸部屋(なるとべや)の親方になった。 ヨーロッパ出身力士としては初の親方である。 彼の相撲に対する愛や姿勢、人柄に鳴戸親方のファンになる者も多い。
“ 現代になるにつれて、食事の幅が広がってきました。
たとえば、力士の食事はちゃんこ鍋が基本。 味もしょうゆか味噌というバリエーションでしたが、今ではカレー味、トマト味などが取り入れられました。 それは、外国人力士が入ってきていることも影響していますね。
たとえば、ハワイ出身の横綱・曙関がいた部屋では、魚肉ソーセージでちゃんこの出汁をとっていたんだそうです。 たしかに魚肉ソーセージっていろんなエキスが入ってるからいい旨みになるんですね。 なかなかない発想だと思います。 また、曙関がおいしく食べられるように、イカのちゃんこにマヨネーズを入れていたんだそうです。 これがまたクリーミーでおいしくって、マヨネーズが浸透していったきっかけにもなりました。
また、琴欧洲関が入ってきた頃には、トマトちゃんこが取り入れられました。 トマトのホール缶を投入し、ケチャップとしょうゆ、オリーブオイルでオシャレな味にしたてるのです。 最初は「うえ~」と思いましたが、食べてみるとおいしい。
今では当たり前のようにちゃんこ屋さんのメニューになっているほどです。”
湊部屋
湊部屋(みなとべや)は、鶏もも、玉ねぎ、油揚げ、大根、人参、しめじ、えのき、ネギなどの具材とコンソメの素、トマトホール缶を使ったトマトちゃんこである。
スピード出世で注目を集めたモンゴル出身の「逸ノ城」はチーズをのせて食べる。 各相撲部屋の海外出身力士の多くは入門当初、和食に馴染めない者も多い中、逸ノ城は和食に順応し過ぎたことで、モンゴルへ帰郷した際に母国の料理を食べて腹を壊したと本人が語っている。 しかし、逸ノ城は不思議にも近代の各相撲部屋で比較的多く取り入れられている「カレーちゃんこ」、いわば、日本人が慣れ親しんでいる「カレー味」だけは苦手であった。 逸ノ城が第二の母として慕っている湊部屋の女将(三浦眞)は、相撲部屋の女将である傍ら、クリニック院長を務める医師でもあり、親身に力士たちをケアをしている。 湊部屋のトマトちゃんこは、その中で誕生したものである。
逸ノ城の好物は「トマトちゃんこ」と「塩ちゃんこ」、そして「唐揚げ」。 湊部屋のトマトちゃんこは、フジテレビのバラエティ番組『ウチくる!?』(1999年4月4日 - 2018年3月25日)で、秋場所で殊勲賞・敢闘賞を受賞し、41年振りに新入幕で金賞を挙げた逸ノ城への取材と共に、2014年11月2日(日)に全国放映された。 逸ノ城は最重量の力士でありつつ、夜空の流れ星に願いを込めるなど純朴で繊細な面もあり、また「ドラミちゃん」の枕で寝ているなど、可愛らしい面も反響を呼び、人気を博している。
両国国技館(東京都墨田区)地下大広間では本場所中、訪れた人たちへ各相撲部屋のちゃんこをローテションで提供(250円~300円)しているが、湊部屋の “ 逸ノ城大好き ”「トマトちゃんこ」も名物である。
錣山部屋
錣山部屋(しころやまべや)は、現役時代に人気力士だった元・寺尾が親方を務める。
錣山部屋のトマトちゃんこは、トマトと野菜をたっぷり入れた洋風ちゃんこ鍋で、鶏出汁ベースとトマトの酸味が食欲をそそり、チーズを加えるとさらに洋風になる。
日本テレビ系列のニュース番組『news every.』の取材で、部屋頭の阿炎が「素材の味がちゃんと出ててチーズが絡まってすごくおいしい」として紹介し、2019年1月29日(火)に「トマトたっぷり洋風ちゃんこ鍋」として全国放映された。
リポーターの池田沙絵美は「トマトの酸味と甘みが生かされながら野菜とお肉のうまみもスープに溶け出していて繊細な味。お肉にトマトの酸味が馴染んでいてチーズが入るとよりコクが深まっておいしい。」とコメントした。
基本的な作り方は、まずオリーブオイルでニンニクと唐辛子を焦がさないよう弱火で炒める。 トマトの水煮や鶏出汁を加えて様々な具材を煮込み、ミニトマトが投入される。
錣山部屋では、他にリンゴ、豚肉、トマトケチャップを使う一風変わった「リンゴ入り中華ちゃんこ鍋」もある。
木瀬部屋
木瀬部屋(きせべや)のちゃんこは、はじめに根菜類を入れ、しばらく煮たあとに味をつけてから肉を入れるのが部屋の伝統。 時には若い衆のリクエストに応じながら、その日のメニューを決めていく。 日替わりで、昼と夜で醤油、味噌、キムチ、トマト、カレーなど味に変化を持たせている。 一食に作られる量は、鍋は一般的な分量に換算して約100人前、米は2升が炊かれる。
肉は毎回必ず入れるが、鶏は二本足で立ち、手を地面につけないことから縁起が良いとされ、場所中は鶏肉だけを使う。 このゲン担ぎは木瀬部屋だけではなく、あらゆる相撲部屋でみられる相撲界全体の伝統的風習である。
木瀬部屋のトマトちゃんこは、巨大なトマト缶、具材はジャガイモ、キャベツ、ネギなどをはじめとした約10種類の野菜(キノコ類を含む)、鶏肉、ベーコン、ウインナー、油揚げが使われる。
これらの材料を次々と大鍋へ投入し、味を調え、ほぼ完成に近い状態にし、稽古の終わる時間を見計らって、仕上げに大量のシュレットチーズが鍋の上面を覆うほど散らされ、供される。
ギャラリー
関連項目
- リンゴ入り中華ちゃんこ鍋
- 番茄火锅:中国