アイスランドの卵類
アイスランドの卵類
概要
アイスランドにおいて、野鳥の卵の採卵に関しては、狩猟の法律を厳守さえすれば、銃器を用いる狩猟に比べて緩やかで免許も必要としない。 ただし、採取期間は決められている。
ウミスズメ科の海鳥の場合、そのほとんどが断崖絶壁にあるため、今日では素人が行うことはなく、地域のレスキュー隊や消防団が代りを担っている。 一般の人々にとって危険をともなわずに採取できるのは、草むらなどに産卵する野鳥類だが、これにもルールがあり、巣にある卵を全て取ってはならず、一つの巣に対して決められた数を残すという規則がある。
調理
ハラゥ・エッグ
ハラゥ・エッグ(Hrá egg)は “ 生卵 ” の意味。サルモネラ菌やカンピロバクターなどの菌毒を含むデリケートな問題がある中、ニワトリ(家禽)の卵の生食においては日本が世界随一の安全性を先んじて誇ってきた。 その反面、国外の食文化の理解に乏しい時代には偏見を含めて到底理解されず、ターブーとされてきたことも事実たが、それは時代と共に払拭される傾向にある。 生卵は日本だけに限らず、ヨーロッパでも伝統的な料理であるタルタルステーキなどに用いられる。 これらは、日本から輸入した卵ではなく、各国の食品安全基準を満たしたものが使用されるが、庶民はレストランのものは安全としながらも、個人の食事では先入観から心理的に生食を避ける人々も多い。 これらの問題は家禽の卵、特に世界一般的に流通するニワトリの卵に関してである。
海鳥
アイスランドでは古くから生食文化が根付いているが、ウミスズメ科の海鳥の卵もその一つである。 陸地で穀物を餌とする家禽とは異なり、潮風に吹かれる岩壁に生息し、魚を餌とする。 採卵者の間では、サルモネラ菌やカンピロバクターに侵されないとされており、古くからそのような事例もない。 断崖から採卵した後、その場で殻の上辺を割り、ショットグラスのようにして生卵を飲み、英気を養う。 これは伝統的に採卵に携わる人たちや年配者、個人の間で行われる “ 粋な食し方 ” てあり、最高の味わいとされる。 今日では安全性の問題から推奨されることはなく、生で供するレストランは皆無である。
ニワトリ
アイスランドでは動物愛護の観点から採卵のみを最優先とする「バタリーゲージ」と呼ばれる狭隘空間の檻で飼育することは行っていない。 2015年からバタリーゲージに対する規制が始まり、鶏卵農家には放し飼いに転換するための猶予を8年間与えていた。 2023年6月30日以降、バタリーゲージの飼育は正式に禁止されている。 それまで市販の鶏卵のほとんどは「放し飼いの鶏のもの」を謳った誇張表示が常識化し、 “ 寒い日は凍死を避けるため檻に戻し、それ以外は放している ” という曖昧な定義と食品表示が問題となっていた。
今日では鶏舎内は開放的で外で自由に運動できる環境で飼育しているのが一般的である。 これらの卵の商品説明には “ 放し飼いの鶏 ” を意味する「フリョアルスム・ハイヌムン」(Frjalsum hænum)と記載されていることが多い。 アイスランド国民は「放し飼いの鶏」にこだわる。 また、国産のニワトリの卵は、日本で一般的な “ 生卵かけご飯 ” が可能なレベルの信頼感を得ている。 生食は推奨されていないが、男女問わず個人の間では生で摂取する人々もいる。 用途例では、粘性の高いスキールを生卵で溶くなどがある。 危険性を促す人々も少なからずいる一方、もはや国産の卵の安全性は高水準、または生食をしながらも妊婦は避けるべきとし、その意見は平行線上にある。 また、生食は表面上では少ないが、実際には多いという意見もある。 しかし、鶏卵に関しては熱狂的ではなく、習慣性もない。 基本的にパンや菓子に使われることが多く、海鳥の卵のシーズンになると影が薄い存在となる。
鶏卵の多くは、ほぼ輸入に頼ってきたが、養鶏業を主とする企業は通年で国内全域に鶏卵を供給するべく、養鶏場を拡大している。 それによって各地域で問題も起きているが、後は “ 習慣的な食材になりえるか ” が最重要課題である。 また、アイスランドには開拓時代に移入したニワトリがいる。 世界一般的に大量生産に向き、日本ではブロイラーと総括される鶏とは異なる。 例えるなら、比内鶏(天然記念物)のようなもので、古い血統であることはDNA解析でも明らかになっている。 この種の鶏卵は、本来、多くの人々が求めているもので、放し飼いの鶏より価値が高い。 地域の農場では主力としているが、企業は放し飼いの名のもとに異なる種の鶏卵を生産している。
ソジン・エッグ
ソジン・エッグ(Soðin egg)は “ ゆで卵 ” の意味。 アイスランドでは最もポピュラーな食し方である。 日本では、半熟と固ゆでの二種類が一般的だが、アイスランドでは三段階に分けられる。
リンソジィズ・エッグ
リンソジィズ・エッグ(Linsoðið egg)は “ 半熟卵 ” に含まれる状態だが、日本で一般的なものよりも黄身は生に近い。
ミズルングソジン・エッグ
ミズルングソジン・エッグ(Miðlungssoðin egg)
ハルズショウザ・エッグ
ハルズショウザ・エッグ(Harðsjóða egg)
ストロップズ・エッグ
ストロップズ・エッグ(Stropuð egg)
民間的な栄養学
野鳥類
チドリ目
ウミスズメ科
卵 | 鳥 | 現地名 | |
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スヴァトフグルズエッグ (Svartfuglsegg) (Langvíuegg) |
ウミガラスの卵。ウミスズメ科ウミガラス属。 | ||
(Stuttnefjuegg) |
ハシブトウミガラスの卵。ウミスズメ科ウミガラス属。 | ||
(Álkuegg) |
オオハシウミガラスの卵。ウミスズメオオ科ハシウミガラス属。 |
カモメ科
卵 | 鳥 | 現地名 | |
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(Sílamávsegg) |
オオカモメの卵。カモメ科カモメ属。 | ||
(Sílamávsegg) |
ニシセグロカモメの卵。カモメ科カモメ属。 | ||
(Sílamáfsegg) |
セグロカモメの卵。カモメ科カモメ属。 | ||
(Hvítmávsegg) |
シロカモメの卵。カモメ科カモメ属。 | ||
(Rituegg) |
ミツユビカモメの卵。カモメ科ミツユビカモメ属。 | ||
(Hettumávsegg) (Hettumáfsegg) |
ユリカモメの卵。カモメ科ユリカモメ属。 | ||
155px | (Kríuegg) |
キョクアジサシの卵。カモメ科アジサシ属。 |
ミズナギドリ目
卵 | 鳥 | 現地名 | |
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(Fýlsegg) |
フルマカモメの卵。ミズナギドリ科フルマカモメ属。 |
カモ目
卵 | 鳥 | 現地名 | |
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155px | (Æðaregg) |
ホンケワタガモの卵。カモ科ケワタガモ属。 |
家禽類
キジ目
卵 | 鳥 | 現地名 | |
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155px | (Landnámshænuegg) |
アイスランド地鶏の卵。キジ科ヤケイ属。入植時代に移入された「ニイチャハイナスニ」とよばれる古い血統のニワトリ。 | |
155px | ハイヌエッグ (Hænuegg) |
ニワトリの卵。キジ科ヤケイ属。アイスランドの養鶏ではイタリアの品種「リボルノ」が最も一般的。 | |
155px | (Kornhænuegg) |
ヨーロッパウズラの卵。キジ科ウズラ属。 |
カモ目
卵 | 鳥 | 現地名 | |
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155px | (Gæsaegg) |
ヨーロッパガチョウの卵。カモ科マガン属。野生のハイイロガンを品種改良したもので、アジアの一般的なガチョウとは学名も異なる。 | |
155px | 155px | (Andaregg) |
アヒルの卵。カモ科マガモ属。アイスランドの古いアヒルは中国の「北京ダック」と同種。 |
※1609年に出版されたアイスランドの学者であるアルングリムル・ヨンソン(Arngrímur Jónsson lærði:1568年 - 1648年6月27日)の著書『クリモガイア』(Crymogæa)の中で彼は「16世紀末の少し前には、個々の農場に自家消費用のガチョウやアヒルはいたが、一般的にアイスランド人は鶏以外の家禽を知らず、家禽は鶏だけだ」と述べている。 また、アイスランドにおける養鶏の歴史によれば、1958年から1964年にかけてアヒル農場が運営され、国内のアヒルの数が大幅に増加したという。そして、これらのアヒルはデンマーク経由で移入した中国の「北京ダッグ」(北京鸭:ベイジンヤー)の卵から孵化したものであることがわかっている。 しかし、その当時、ガチョウやアヒルにせよ、農場があった事実や数が以前より増えたという事実だけで、卵や食肉として一般的に流通するほどの生産性はなかったと思われる。 2015年秋のスウェーデン食糧庁の報告書によるとアイスランド国内のアヒルの総数は794羽と少ない。 今日でも採卵だけを目的として飼育する農場や採卵と食肉の両方で飼育する農場はあるが、どちらも小規模で自家消費か農場の直売、またはローカルな食品売場などで地域密着型で販売している。 また、家庭では食肉目的ではなく、ペットとして親子で飼育しながら採卵を行う人々もいる。 生産量に欠くため全国的ではないが、農場付近の地域住民にとっては一般的であり、長く親しまれている卵の一つである。
ギャラリー
スヴァトフグルズエッグ
(Svartfuglsegg)ケースト・エッグ
(Kæstegg)- Icelandic Cuisine - Stropuð egg.png
エッグヤスーパ
(Stropuð egg) エッグヤスーパ
(Eggjasúpa)