アンギーラ
アンギーラ(Anguila:うなぎ)は、スペイン料理において重要な役割を担っており、多くの典型的な郷土料理に登場する。 ガリシア地方では、ウナギやヤツメウナギを使ったシチューはとても人気がある。 また、バスク地方、エストレマドゥーラやバレンシアなどの伝統的な鰻料理は他の地方でも高く評価されている。
食材としてのウナギ
アングーラス
アングーラス(Angulas:シラスウナギ)は、活魚、生鮮品、冷凍品、缶詰で販売されている。 12月から4月までは生のシラスウナギ、1年を通して冷凍のシラスウナギを食べることができる。 シラスウナギは鰻と同じように料理することができ、ニンニクや唐辛子、オリーブオイルと一緒に食べると美味である。 しかし、鰻の稚魚であるシラスウナギは日本で「白いダイヤ」と称されると同様、スペインでも値段はかなり高額であり、特にクリスマスにはさらに価格が高騰する。 1980年代、アンダルシア州は40トンもの年間漁獲高を誇り、家畜の餌にするほどであったが、2009年には年間漁獲量が300キロまで急激に落ち込んだことで、2010年にはアンダルシア州政府は10年間の禁漁を決定し、他の州では制限つきで漁が許されている。 もともとは高価なものではなかったが、現在はキロあたり1.000ユーロを超える高級珍味になっている。
高級珍味で知られるキャビアは金気(ゴールド以外の金属)で味を損なうため、金(ゴールド)のスプーンで食すのが最上とされ、キャビアスプーンには貝製のものある。 繊細な味のアングーラスも同様であり、調理には陶器の鍋が使われ、貝や木製のフォークで食される。
グーラ
グーラ(La Gula)は、シラスウナギが高価であることから、シラスウナギを模倣して加工された低価格な代替食品である。 日本でも鰻の蒲焼を模倣した加工食品が見られるが、スペインの場合は鰻の稚魚を珍重するため、シラスウナギを模倣している。
アンギーラ
アンギーラ(Anguila:うなぎ)は、日本の蒲焼に使うような成長した鰻を指すが、二ホンウナギ(学名:Anguilla japonica)ではなく、ヨーロッパウナギ(学名:Anguilla anguilla)である。 高級珍味のシラスウナギとは別に伝統的に食されている。
アンギーラ・アウマーダ
アンギーラ・アウマーダ(Anguila Ahumada)は、鰻の燻製を指す。 皮を剥くと上品な白身であり、むき身のフィレ(Filetes de Anguila Ahumada)としても販売されている。 調理することで滑らかでクリーミーな食感があるため、ヨーロッパ諸国で大きな需要がある。
- Anguila Ahumada - Smoked Eel.png
アンギーラ・アウマーダ
伝統料理
アングーラス・ア・ラ・ビルバイーナ
アングーラス・ア・ラ・ビルバイーナ(Angulas a la Bilbaína)は、シラスウナギをニンニク、唐辛子、エクストラバージンオリーブオイルで炒めたもの。
アリペブレ
アリペブレ(All i Pebre)は、ニンニク、パプリカ、唐辛子、筒切りにした鰻とジャガイモを煮込んだもの。
アンギーラ・ア・ラ・エクストレマドゥーラ
アンギーラ・ア・ラ・エクストレマドゥーラ(Anguila a la Extremeña)は、鰻とトマト、タマネギ、チョリセロペッパー、ローリエ、パセリ、ニンニクと一緒を調理する。
パエージャ・デ・アンギーラ・バレンシアーナ
パエージャ・デ・アンギーラ・バレンシアーナ(Paella de Anguila Valenciana)は、パエリアに鰻の他、トマト、ピーマン、エビ、エスカルゴ、鶏肉、ハムなど、さまざまな具材を入れることができる。
エスパルデーニャ
エスパルデーニャ(Espardenyá)は、バレンシア地方の料理で鰻をジャガイモと一緒に調理し、ソテーしたウサギ、アヒル、鶏肉を加え、最後に卵を落としたもの。
トレブヘナ村
1987年(昭和62年)に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の作品映画『太陽の帝国』は、スペイン南部のアンダルシア州カディス県にあるトレブヘナ村に大規模な屋外セットを建設して撮影された。 スピルバーグは世界中のロケ地を探し、トレブヘナに決定した。
この村にはシラスウナギの王様(Rey de las Angulas)と称されたロメロ・バスティロ(Romero Bustillo)が1970年代に創業した「カーサ・リトリ」(Bar Casa Litri)というレストランがある。 名物のシラスウナギ料理はスピルバーグをはじめ、撮影スタッフも堪能した。 バスク州ビスカヤ県ビルバオの伝統的な料理「ビルバオ風」(アングーラス・ア・ラ・ビルバイーナ)と同じ料理だが、当時トレブヘナ村はシラスウナギ最大の漁獲高を誇っていたため「トレブヘナ風」と呼んでいる。 創業者であるロメロ・バスティロは2010年に亡くなったが、店は現在も営業しており、店内には本人の肖像画と訪れた政治家、芸術家、スポーツ選手など数多くの著名人の写真が飾られている。
消費国
オランダやデンマークなどヨーロッパ諸国でも鰻は人気はあるが、最大の消費国はイタリアである。 鰻を使ったイタリア料理のレシピは数多くあり、中でもベネチアの鰻料理が際立っている。