アイスランドの野草類
アイスランドの野草類(Villtar jurtir:ヴィルタル・ユルティル)は、アイスランドに自生する野草類および薬草類である。 また、アイスランドにおける薬用植物(メディカルハーブ:lækningaplanta)の一種として樹木類も表記した。
概要
アイスランドでは入植時代から多くの野草類をさまざまな方法で利用してきた。 その植物類の一覧である。
野草類
セリ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
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(Ætihvönn) |
セイヨウトウキ (Angelica archangelica) |
セリ科シシウド属。伝統的な薬用植物の一つで鎮痛剤や鎮静剤、壊血病に効果があり、呼吸器系の粘液を促し、喘息に効果があると考えられている。アンジェリカ・ジンには必須の原料となる。 | |
(Geithvönn) |
ワイルド・アンジェリカ (Angelica sylvestris) |
セリ科シシウド属。セイヨウトウキと同様の効能はあるが効果は劣るとされる。 | |
(Kúmen) |
キャラウェイ (Carum carvi) |
セリ科ヒメウイキョウ属。果実は香辛料の一つ。駆風作用、利尿作用がある。また、母乳生産の促進、胃の強化、肝炎や黄疸を取り除く効果があるとされている。葉も食用として利用できる。 | |
(Spánarkerfill) |
スイートシスリー (Myrrhis odorata) |
セリ科ミルリス属。葉や種子はアニスの風味があり、全草が食用となる。香辛料や香草としても使用される。 | |
(Sæhvönn) |
マルバトウキ (Ligusticum scoticum) |
セリ科マルバトウキ属。アイスランドではセージハーブやマスターハーブとも呼ばれ、魔法に使用されていたとされているが、どのような方法で使用されたのかは、もはや不明。食用は可能。 |
※セイヨウトウキ(ゴールデン・アンジェリカ)を含む、これらのアンジェリカは、ヨーロッパでも伝統的な薬草として利用されてきた。セイヨウトウキの根や種の粉末は、煎じ薬(ハーブティー)として利用される。茎は、砂糖漬け(クリスタル・アンゼリカ)としてケーキの飾りつけ等に、葉は、魚料理や果物の風味付けに用いる。また、種子はリキュールの香味付けに用いられる。他には、種子を蒸留して抽出した精油(エッセンシャルオイル)は、ムスク(麝香:じゃこう)の代用として香水の原料にも利用される。
ナデシコ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
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(Lambagras) |
コケマンテマ (Silene acaulis) |
ナデシコ科マンテマ属。根は硬いが食用とされ、水や牛乳でやわらかく煮た粥は空腹を満たす上で人々の重要な食糧源となった。他の食材とバターで炒めて付け合わせにもなる。 | |
(Skarfakál) |
アライトツメクサ (Sagina procumbens) |
ナデシコ科ツメクサ属。 | |
(Vegarfi) |
ミミナグサ (Cerastium fontanum) |
ナデシコ科ミミナグサ属。アイスランドにおける伝統的な用途は不明。若い苗は食用可能。 | |
(Skurfa) |
オオツメクサ (Spergula arvensis) |
ナデシコ科オオツメクサ属。主に牛の飼料用の植物であったが、種子は食用とされていた。栄養価は高いが、収穫量は非常に少ない。 | |
(Haugarfi) |
コハコベ (Stellaria media) |
ナデシコ科ハコベ属。生でサラダで食される。煎じ薬は、炎症の冷却や痛みの緩和、傷の治癒、便秘に効果があるとされた。他に軟膏に使用され、皮膚の湿疹、かゆみに優れているとされる。 | |
(Fjöruarfi) (Smeðjukál) |
ハマハコベ (Honkenya peploides) |
ナデシコ科ハマハコベ属。肉厚の葉を細かく刻み、羊乳で煮たり、スキムミルクに浸して食された。葉はキャベツに似た味がする。 | |
(Lækjagrýta) |
ヌマハコベ (Montia fontana) |
スベリヒユ科ヌマハコベ属。 | |
(Geldingahnappur) |
ハマカンザシ (Armeria maritima) |
イソマツ科アルメリア属。根は硬いが古い時代は宮殿で食されていた。また、食糧難の時は人々の重要な食糧源となった。花から蜜を吸ったり、少女が花冠を作り、頭に飾るのは珍しくない。 | |
(Sóldögg) |
モウセンゴケ (Drosera rotundifolia) |
モウセンゴケ科モウセンゴケ属。食虫植物の一種。粘液を入れたブランデーは奇跡的な効能があると信じられ、飲めば医師の診察は必要なかった。イボ、ハンセン病、ソバカスの除去にも使用された。 | |
(Blóðarfi) |
ミチヤナギ (Polygonum aviculare) |
タデ科ミチヤナギ属。煎じ薬は、下痢、食欲不振、出血に使用された。消化管の出血や尿路結石の除去、下痢には非常に効果があるとされる。粉末は、鼻血を止めるためにも使用できる。 | |
(Kornsúra) (Túnblaðka) |
ムカゴトラノオ (Bistorta vivipara) |
タデ科イブキトラノオ属。根の煎じ薬は、傷や消化管の出血、下痢、疝痛を解消するとされた。また、歯肉炎や膣内の炎症、治りが遅い傷などの洗浄にも良いとされる。根は甘味がある。 | |
(Ólafssúra) (Súrkál. Hrútablaðka, Fjallakál) |
ジンヨウスイバ (Oxyria digyna) |
タデ科ジンヨウスイバ属。スイバやムカゴトラノオと同様の効果があるとされる。スイパと同様に食用。 | |
(Hundasúra) |
ヒメスイバ (Rumex acetosella) |
タデ科イブキトラノオ属。スイバと同じ効能があるとされる。 | |
(Túnsúra) |
スイバ (Rumex acetosa) |
タデ科スイバ属。浮腫(むくみ)に非常に効果があり、肝臓を強化するとされる。他には、食欲不振、便秘、痔、壊血病などに効果がある。葉は酸味があり、粥やスープ、サラダなどで食される。 | |
(Njóli) (Heimula, Heimulunjóli) |
ノダイオウ (Rumex longifolius) |
タデ科スイバ属。強壮効果、血液浄化、虫歯予防、下剤、利尿、鎮静作用があるとされる。葉の煎じ薬は下痢、肝臓病、便秘、壊血病、ハンセン病、敗血症に効くとされた。スイパと同様に食用。 | |
(Rabarbari) |
ルバーブ (Rheum rhabarbarum) |
タデ科ダイオウ属。中国原産の薬用植物で14世紀にヨーロッパで栽培を開始した。アイスランドに自生する帰化植物で春と秋の年に2回収穫できる。畜産農場の余った土地で栽培も行われている。 |
※モウセンゴケの粘液を入れたブランデーは、アクアエ・ヴィタエ・ロリス・ソリス(Aquae Vitae Roris Solis:水晶のように明るい命の水)という名称で販売されていた。
アブラナ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
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(Skarfakál) |
キョクチトモシリソウ (Cochlearia officinalis) |
アブラナ科トモシリソウ属。古くはサラダ、スープに利用されるだけでなく、茹でてからミーサに漬けて冬の保存食とし、大麦や小麦粉と牛乳、スキール、ミーサなどと一緒に粥にも使用された。 | |
(Fjörukál) |
ヨーロピアン・シーロケット (Cakile maritima) |
アブラナ科オニハマダイコン属。葉は多肉質で根も含めて食用。キョクチトモシリソウと用途や保存法は変わらない。1783年に発生したラキ火山の際には南部の住民を救った栄養源でもある。
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(Hjartarfi) |
ナズナ (Capsella bursa-pastoris) |
アブラナ科ナズナ属。血流を調整し、鼻血や月経出血、または出産後の出血を止めるために利用された。煎じ薬は冷やして飲むべきとされる。日本では “ 七草 ” の一つとして知られる。 | |
(Hrafnaklukka) |
ミチタネツケバナ (Cardamine hirsuta) |
アブラナ科タネツケバナ属。 | |
(Lambaklukka) |
ノーザン・フィールド・ビタークレス (Cardamine nymanii) |
アブラナ科タネツケバナ属。ミチタネツケバナと同様の効果があるとされる。 |
※キョクチトモシリソウは、古くからの薬用植物であり、食材である。溶解作用、利尿作用、発汗剤作用、血液浄化作用、また、生理不順(月経の促進)に効果があるとされた。新鮮な葉は砂糖と一緒に乳鉢で砕くのが最適とされる。根は生または調理して食された。今日では、リウマチ、浮腫、赤痢、さまざまな皮膚病などのの疾患に使用されている。砕いたた新鮮な葉を傷口に塗るのも良い。
カル(Kál)は “ キャベツ ” を意味する。これらはビタミンCを多く含み、それを摂食していたことで壊血病がそれほど蔓延しなかったとされる。塩を使わずにミーサ(乳清やホエイとも呼ばれる)を利用する保存法は伝統的なスールマートゥルに残っている。今日では壊血病に陥る人々はいないが、ビタミンC、ヨウ素、キャベツの風味を持つ食材として料理人や家庭から再び注目され、利用されている。
バラ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
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(Tágamura) (Silfurmura) |
ヨウシュツルキンバイ (Argentina anserina) |
バラ科アルゲンチナ属。古くから、根、茎、葉、種子の全てが利用された。活力を与える強壮効果、発汗作用、駆虫作用があるとされ、下痢、出血、痛風に利用された。葉は煎じ薬、根は粥が主。 | |
(Blóðkollur) |
ワレモコウ (Sanguisorba officinalis) |
バラ科ワレモコウ属。消化管、口腔、膣の炎症や傷に効果があるとされる。根の粉末は、傷口に塗り、鼻血は鼻から吸い込み止血する。全草の煎じ薬は下痢止めに用いる。葉や芽は食材にもなる。 | |
(Ljónslappi) |
アルパイン・レディース・マントル (Alchemilla alpina) |
バラ科ハゴロモグサ属。傷や切り傷の治癒、下痢、赤痢、出血を止めるために使用された。葉の煎じ薬を温めたものは喉のうがいに良いと考えられていた。 | |
(Maríustakkur) |
スィン・ステム・レディース・マントル (Alchemilla filicaulis) |
バラ科ハゴロモグサ属。収斂作用があり、たるんだ胸を引き締める効果がある。また、ひどい生理痛にも良いとされる。 | |
(Mjaðjurt) |
セイヨウナツユキソウ (Filipendula ulmaria) |
バラ科シモツケソウ属。根の煎じ薬や粉末は、腎臓疾患に使用された。葉や花も発汗作用、鎮痛作用、治癒作用があるとされ、その煎じ薬は、下痢や出血の治療、重い傷の洗浄に用いられた。 | |
(Brenninetla) |
セイヨウイラクサ (Urtica dioica) |
イラクサ科イラクサ属。リウマチや痛風の治療。花粉症、皮膚の発疹や小児湿疹、乾癬などの疾患。母乳生産の促進。腎臓を活性させ、血液の浄化、利尿作用などがある。葉を煎じ薬とする。 | |
(Fjalldalafífill) |
フウリンダイコンソウ (Geum rivale) |
バラ科ダイコンソウ属。根にはさまざまな芳香物質と風味物質が含まれており、食べ物や飲み物の香辛料として使用されていた。また、食欲不振や消化不良に効果があり、強壮効果もあるとされる。 |
※ヨウシュツルキンバイの粥は、すりつぶした根を水または牛乳で煮て食された。古い医学書には、胃の調子が悪い場合には煎じ薬を浴びるか、靴の中に詰め込むとよいと書かれている。乾燥葉は、空気中の湿気を吸収して傷みやすいため、乾燥した場所に保管するなどの注意する必要である。ドイツでは第二次世界大戦中、ひどい生理痛の薬として、根と葉を粉末にしたカプセルを販売していた。体の筋肉をリラックスさせる筋弛緩作用もある。
アイスランドでは、フウリンダイコンソウの花の煎じ薬は、持続性の肺炎や風邪、副鼻腔の閉塞に良いと考えられている。根は香辛料の一種として、 “ 草原ニンニクの根 ” (Engjanegulrót)と呼ばれた。根からも煎じ薬は作られ、病後の体力回復に適しているとされる。また、根を乾燥させた粉末は、重い傷口に振りかけて使用された。
セイヨウナツユキソウの葉は芳香性があるため、酒類であるミード(ハチミツ酒)製造の際、容器の内側に塗り込み、香料としても使用された。
キントラノオ目
※スミレは他に、一般名ヒース・ドッグ・バイオレット(アイスランド語:Týsfjóla/学名:Viola canina)も見られるが用途は不明。
ユキノシタ目
※アイスランドではバイキング時代から使用されてきた長い歴史をもつハーブで、海外では通称 “ 北極の根 ” (Arctic Root)とも呼ばれる。うつ症状や不安感を軽減し、精神を安定させ、集中力や気力を高める効果があり、化学合成された精神安定剤(向精神薬)ではなく、自然由来のため、非常に人気が高い。スウェーデンハーブ研究所は臨床試験で検証し、それは科学雑誌に掲載された。今日では、サプリメント、チンキ剤なども市販され、鎮静作用、治癒作用、抗炎症作用があり、老化防止にも役立つと考えられている。イワベンケイは、日本では標高が高いエリアのみで見られる。また、他国では高山病などに用いられる。アイスランドでは栽培も行われており、茹でてサラダにしたり、炒めて食用とされ、食材としても流通している。
リンドウ目
※マーシュ・フェルワートは、モンゴルでは、全草を乾燥させたものを急性肝障害を含む肝臓や胆汁の疾患を治療するための伝統薬として使用している。
アイスランドでは、カワラマツバは上記以外にも、疲労を緩和する効果や様々な皮膚疾患に特に効果があるとされる。ハーブティーは、強い薬物、アルコール、またはコーヒーを過剰摂取した場合のデトックス(解毒作用)に良いと考えられている。植物を細かく刻み、新鮮な羊の無塩バター(バター4に対してハーブ2の割合)を混合して作った軟膏は、痛めた腱に最適とされる。
キキョウ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
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(Bláklukka) |
イトシャジン (Campanula rotundifolia) |
キキョウ科ホタルブクロ属。根は甘味があり、食用とされる。他には、繊維の染色にも利用されていた。 |
※キキョウ類は主にアジアに生息するため、非常に珍しい。キキョウの根(桔梗根)は、中国医学では、鎮静、鎮痛、鎮咳、去痰、抗炎症、末梢血管拡張作用、痰を伴う咳、化膿性の腫れ物、喉の痛みに効果があるとされ、日本でも古くから生薬とされる。韓国では根はトラジ(도라지:桔梗の意味)と呼ばれる健康食材で、キムチなどに利用される。
フウロソウ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
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(Blágresi) (Storkablágresi, Litunargras) |
ウッド・クレインズ・ビル (Geranium sylvaticum) |
フウロソウ科フウロソウ属。葉の煎じ薬は、尿路結石を破壊し除去する効果があるとされる。他には、下痢やリウマチにも広く使用されている。葉は傷や皮膚疾患の治療にも適しているとされる。 |
シソ目
※ワイルドタイムは通称 “ アイスランドのタイム ” または “ 北極のタイム ” と呼ばれる。こだわりのシェフたちは自ら採取し、料理に用いる。酒類のアンジェリカ・ギンの原材料としても使われる。アイスランドではさまざまなフレイバーの塩が作られているが、それにも使われている。
タヌキジソは、副腎皮質ホルモンの分泌、利尿作用、また、貧血やその他の血液疾患に良いと考えられている。若葉を15~20分煮出した煎じ薬は、血液の強化、および浄化に非常に良いとされる。子供の場合は少量の摂取が必要である。
セイヨウグンバイヅルは、アイスランドで古くから崇められている薬用植物で上記以外にも、根の粉末をタバコに混ぜて吸ったり、鼻から吸い込むと頭脳と視力を強化すると信じられていた。
ムシトリスミレの軟膏は、細かく刻んだ葉90gを無塩バター120gと獣脂60gを長時間煮て、液状の部分を濾し取り、残ったものが軟膏になる。葉の煎じ薬で頭を洗浄してきれいにすることでことで、頭皮を強化し、ハゲの予防に良いとされた。
オオイヌノフグリは、アフガニスタンの薬草学者であるマホメット・アラム(Mahomet Allum:1858年頃 - 1964年3 月21日)によって、20世紀半ばにオーストラリアのアデレードで心臓病の患者の治療に使用した。ヘビ咬傷の治療、出血、関節リウマチ、喘息、去痰薬としても使用される。
ムラサキ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
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(Blálilja) |
オイスタープラント (Mertensia maritima) |
ムラサキ科ハマベンケイソウ属。身体に栄養を与えて丈夫にし、心臓病や胸部疾患の治療に役立つと考えられていた。根を潰して牛乳で煮たものは健康に良いとされている。 |
※葉には、チーズの香気成分である有機硫黄化合物のジメチルスルフィド (Dimethyl sulfide:DMS) が含まれている。牡蠣(オイスター)の場合、生食を敬遠するような硫黄臭に似た香りも同じ物質である。これは鮮度の問題より、海水の富栄養化やプランクトンなどに影響される。
キク目
※セイヨウノコギリソウは最高の薬草のひとつとされ、強壮、軟化、収縮、溶解、浄化、腱の伸びやこわばりを改善するとされている。根の粉末は、臭いのある傷口に振りかけるのに適しており、歯の穴に詰めることもあった。お茶、スープ、軟膏によく使われる。お茶にする場合は、アルパイン・レディース・マントル(Alchemilla alpina)やタイム(Thymus praecox)など、他の植物も一緒に入れることが多い。煎じ薬は風邪やリュウマチを和らげ、シワをなくすと信じられていた。洗顔にも使われ、醜い傷はそれで洗われることが多かった。葉の軟膏は軟らかくなり、ハンドクリームとして使われたが、発疹、腫れ、びらん、潰瘍などにもよく効く。
ユリ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
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(Ferlaufungur) (Páraiséad) |
クルマバツクバネソウ (Paris quadrifolia) |
シュロソウ科ツクバネソウ属。ヒ素や水銀中毒の解毒剤として作用するといわれている。他国では主に根が薬用として使用されていた。果実は有毒。 |
キジカクシ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
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(Villilaukur) |
フィールド・ガーリック (Allium oleraceum) |
ヒガンバナ科ネギ属。アイスランドでは古い時代に薬用植物として持ち込まれたと考えられている。畑や農場付近の数か所にしか見られない。同国では自然保護法に基づいて保護されている。 |
※葉はタマネギの風味をもつ。かつては、ヴァイキングのお気に入りの野菜で主にキャベツ料理の香辛料として使用されていたとされる。スウェーデンでは18世紀まで同様に使用されていた。また、フィンランドの学者である エリアス・リョンロート(Elias Lönnrot :1802年4月9日 - 1884年3月19日)は、使用法について語っている。ノルウェーでは過去には食品の香料として使用されていた。植物そのものの個体数が減っているため、今日では稀である。
オモダカ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
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(Sýkigras) |
スコティッシュ・アスフォデル (Tofieldia pusilla) |
チシマゼキショウ科チシマゼキショウ属。アイスランドにおける伝統的な用途は不明。 |
ツツジ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
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(Beitilyng) |
ギョリュウモドキ (Calluna vulgaris) |
ツツジ科ギョリュウモドキ属。膀胱炎や尿路感染症に特に効果があるとされる。他に、ハーブティーは安眠効果、軟膏はリウマチやその他の炎症に効くとされている。 | |
(Sortulyng) |
クマコケモモ (Arctostaphylos uva-ursi) |
ツツジ科クマコケモモ属。果実や葉の粉末を煎じたものは薬として使用された。粉末は小さじ半分をスプーン1杯のミーサに入れて1日2回、煎じ薬は大さじ1杯を1日3回摂取した。 |
※クマコケモモの葉に含まれるアルブチン(Arbutin:C12H16O7)は抗菌作用があり、尿路結石や尿路感染症、大腸菌感染症、その他、下痢(赤痢を含む)、口内炎、皮膚の欠損にも効果があったとされ、アイスランドでは今日でも薬局方に記載されている。定期的な摂取は膀胱炎の予防になることが研究により示された。ただし、副作用があり、乾燥葉をわずか 15g 摂取しただけで吐き気や嘔吐などの中毒症状を引き起こす可能性があるため、過剰摂取や長期間の摂取は常に注意が必要である。子供、妊婦、授乳中の女性は使用してはならない。
クマコケモモの葉は、日本では「ウワウルシ」と呼ばれる生薬で、尿路殺菌薬として腎盂炎、尿道炎、膀胱炎などに用いられる。
キンポウゲ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
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(Brjóstagras) |
チシマヒメカラマツ (Thalictrum alpinum) |
キンポウゲ科カラマツソウ属。女性の乳がんや乳腺炎に使用された。他の病気や内部感染症、喉の痛みなどにも利用されたと考えられている。 |
フトモモ目
マツムシソウ目
※セイヨウカノコソウはヨーロッパでは広く知られる薬用植物で多くの地域で栽培されており、それを原料として鎮静剤が作られている。アイスランドでは地域が限られているため、一般的にほとんど使用されていない。特にワインと一緒に飲むと利尿作用があり、脇腹の痛みに効果があるとされる。根は疫病を防ぐために使われていた。猫が根の匂いを嗅ぐと瞳孔が開くことから、目の病に良いとされた。この香気成分には、マタタビと同様に猫を興奮させる効果があるため、男女の恋愛感情も刺激するという古い迷信がある。根には強力な鎮静作用のある物質が含まれている。
サクラソウ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
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(Sjöstjarna) (Fagurblóm) |
ツマトリソウ (Trientalis europaea) |
サクラソウ科ツマトリソウ属。砕いた花や葉は、さまざまな目の疾患に効果があるとされ、患部に当てて使用された。根の煎じ薬は、嘔吐を誘発するために使用されていた。 |
ケシ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
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(Melasól) |
ホッキョクヒナゲシ (Papaver radicatum) |
ケシ科ケシ属。不眠症(睡眠障害)、鋭い痛み、腱の緊張に良いとされる。小さく切った花を濃い白ワインの中に入れて室温で1週間放置すると、ドロップができる。花が白やピンクの種もある。 |
※白やピンクの種(Stefánssól)
イワヒバ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
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(Mosajafni) |
コケスギラン (Selaginella selaginoides) |
イワヒバ科イワヒバ属。アイスランドにおける伝統的な用途は不明。 |
※フィンランドでは伝統医学として、くる病の治療薬に使用されてきた。
ヒカゲノカズラ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
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(Skollafingur) |
コスギラン (Huperzia selago) |
ヒカゲノカズラ科コスギラン属。アイスランドにおける伝統的な用途は不明。 |
※他の北欧諸国では、煎じ薬は、シラミの駆除、堕胎、便通を促して腸内寄生虫の虫下しなどに強力な効果があるとされ、使用されていた。
ハナヤスリ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
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(Naðurtunga) |
スモール・アダーズ・タング (Ophioglossum azoricum) |
ハナヤスリ科ハナヤスリ属。アイスランドにおける伝統的な用途は不明。地熱のある場所でのみで見られる。 |
※ヨーロッパの伝統的な民間療法では、葉や根茎を傷の治癒や湿布として使用している。砕いた葉を液体の油で煮て作られた傷軟膏は、通称「慈善のグリーンオイル」(Green Oil of Charity)と呼ばれた。また、葉の煎じ薬は、内出血や嘔吐に用いられた。
ウラボシ目
※オオエゾデンダの根茎には甘草の香りがあり、甘い味がする。セイヨウオシダの根茎は約15gを食べる必要があるが、人々はその前にニンニクを食べていた。
トクサ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
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(Klóelfting) |
スギナ (Equisetum arvense) |
トクサ科トクサ属。春に芽を出す胞子茎は、バター炒めや牛乳粥と煮込んで食される。また、煎じ薬は、尿閉、下痢、痔、便秘に良いとされた。地下茎(塊茎)は、甘味がある。 |
※日本では、スギナの胞子茎(胞子を放出する茎)は “ つくし ” または “ つくしんぼ ” として知られる春の山菜の一つ。
ニシキギ目
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
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(Mýrasóley) |
ウメバチソウ (Parnassia palustris) |
ニシキギ科ウメバチソウ属。肝臓や消化管の慢性的な炎症、痔、持続的な下痢に対して広く使用されている。また、うつ病や不整脈の治療、治りにくい傷にも使用されている。 |
※植物自体は目に有害とされたが、その煎じ薬は肝炎や脾腫、風邪や胸の圧迫感に良いと考えられていた。
マメ目
※ハマエンドウを含むレンリソウ属の多くは、神経毒素の一種である β-N-オキサリル-L-α、β-ジアミノプロピオン酸が含まれており、ラチリズム(Lathyrism)と呼ばれる神経および身体障害に陥るリスクが高いため、過剰摂取は禁物である。主な症状は、脱力感、倦怠感、下半身や足の麻痺、足の筋肉の萎縮、骨格の変形などを含む、運動失調症、骨関節症、血管運動症を発症し、慢性的な疾患、または不治の病とされる。日本でハマエンドウ(浜豌豆)は一般的に流通はしないが、民間的に山野草(さんやそう)の一種として摂食量をわきまえた上で食されている。豆類を多く食するインドの一部地域では販売を禁止し、発病を防止している。中国では葉を伝統医学(漢方薬)として利用している。
イネ目
※学名(Elymus alopex)は、北欧では気候変動に適応した将来的な食糧生産に向けたプロジェクトとして「農作物野生近縁種」(CWR:Crop Wild Relatives)のリストに含まれている。これらは栽培作物と密接に関連する野生種であり、干ばつ、水害、害虫などに対する耐性を持つ遺伝的特性がある。また、新たな作物の開発に必要な遺伝子ベースとなる。
樹木
ブナ目
※ヨーロッパダケカンバの葉は、血液浄化剤と考えられており、体内の余分な水分を排出する利尿作用があるため、腎臓病の治療に使用される。他にリウマチ、痛風などの関節炎、傷などの外部治癒、湿疹や乾癬などの皮膚疾患などにも幅広く利用されている。 また、樹液は葉と同様に健康に良いと考えられている。血圧を安定させる作用、腎臓への負担を軽減させる作用、他に抗炎症作用や血液浄化作用など、健康に有用なさまざまな物質が含まれているとされ、ガンとの闘いにも役立つとされている。これまで樹液を含んだ食品は、シロップ、酒類などであったが、2010年に初めてジュース(大量生産ではない)が商品化された。味はスイカに似ており、アイスクリームに用いた場合、味に最適な結果をもたらしたことから商品化に向けて開発が進められいる。
マツ目
※アイスランドでは全ての針葉樹の若芽には薬効があるとされ、枝、茎、種子が有毒とされるマツ目イチイ科を除いてほとんどが食用となる。採取シーズンは6月頃から。トウヒの新芽を食用とするのはノルウェー、カナダなどの寒冷地域でも見られる。日本では松葉は松葉茶として利用されている。
外来種
画像 | 現地名 | 一般名(学名) | |
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(Skógarkerfill) |
シャク (Anthriscus sylvestris) |
セリ目セリ科シャク属。1920年代に観賞用としてアイスランドに持ち込まれたと考えられている。同国における用途は不明。北欧諸国や他国では薬用および食用として使用されている。 |
※根茎には、リグナン化合物であるデオキシポドフィロトキシン(Deoxypodophyllotoxin:DPT)が含まれており、ガン細胞の増殖の抑制および死滅を含む抗がん作用、抗腫瘍効果が認められ、注目を集めている。また、化粧品や栄養補助食品に使用できる活性物質も含まれている。
ノルウェーの植物学者であるイェンス・ホルンボー(Jens Holmboe:1880年5月5日 - 1943年7月24日)によれば、ニンジンの近縁種であり、古代において根は最も重要な食糧源の一つであったという。ノルウェーでは、人間に対して軽度の毒性があると警告しているが、依然として栽培(家庭菜園を含む)され、根は食用とされている。この毒性はアルカロイドの一種であるケロフィリン(Chaerophyllin:C21H20O6)に起因すると考えられ、菌類に侵された植物個体に発生する可能性があるとしている。
フィンランドでは、若い葉はスープ、根はバースニップ(白人参)に似た根菜として食用とされている。
ギャラリー
- ラーバルバルアスルタ:ルバーブのジャム。アイスランドの代表的なジャムでピザにも添えられる。新たにバニラの風味を加えたものは、2014年のフードコンテストで金賞を受賞した。
- ランバシュニッツセル:ラムのカツ。ルバーブのジャムを添えるのが定番。
- ラーバルバルアグロイトゥル:ルバーブの粥。アイスランドの粥は甘いミルク仕立て。
- ラーバルバルアグラニータ:ルバーブのグラニテ。グラニテはシャーベットのようなもの。
- フィフラシーロプ:タンポポのシロップ。
- ビルキシーロプ:ヨーロッパダケカンバのシロップ。原材料は樹液と葉、砂糖のみで添加物は不使用。
- グレン二シーロプ:シトカトウヒの新芽のシロップ。
- ビルキテー:ヨーロッパダケカンバのハーブティー。
- ビルキサーヴァ:ヨーロッパダケカンバの葉のジュース。
- ビルキサーヴィ:ヨーロッパダケカンバの樹液のジュース。
- ラーバルバルアサルト:ルバーブの塩。
- レイクトゥ・サルト:燻製塩。ヨーロッパダケカンバが使われている。
- アンジェリカ・ギン:セイヨウトウキをはじめ、国内で採れる野生植物が使われている。
- ルバーブ・ビターズ:ルバーブを酒に漬け込んだビターズ。家庭やBARなどで自家製で作られる。
- ビルキル:ヨーロッパダケカンバのシュナップス。
- ビョーク:ヨーロッパダケカンバのリキュール。アイスランドのアーティスト名が由来ではない。
- レイキャヴィク・ジン:国内と地元で採れる野生植物が使われている。
- エイニベルヤ・ギン:ジュニパーベリーを使ったジン。
ビルキテー
(Birkite)ビルキサーヴァ
(Birkisafa)ビルキサーヴィ
(Birkisafi)グレン二シーロプ
(Grenísíróp)アンジェリカ・ギン
(Angelica Gin)ルバーブ・ビターズ
(Rhubarb Bitters)ラーバルバルア
(Rabarbara)アゥカヴィティ
(Ákavíti)ビルキル
(Birkir)ビョーク
(Björk)ボルクール
(Börkur)ビヤルキ
(Bjarki)レイキャヴィク・ジン
(Reykjavík Gin)