ひと口カレー
ひと口カレー(ひとくちかれー)は、テレビドラマ脚本家、エッセイスト、小説家の向田 邦子(むこうだ くにこ:1929年・昭和4年11月28日 - 1981年・昭和56年8月22日)の手料理である。
小料理 ままや
ままやの開店案内
おひろめ
蓮根のきんぴらや肉じゃがをおかずにいっぱい飲んで、おしまいにひと口ライスカレーで仕上げをするーー
ついでにお惣菜のお土産を持って帰れるーー
そんな店をつくりました。
赤坂日枝神社大鳥居の向かい側通りひとつ入った角から二軒目です。
店は小造ですが味は手造り、雰囲気とお値段は極くお手軽になっております。
ぜひ一度おはこびくださいまし。
1978年(昭和53年)、執筆活動の傍ら、実妹・和子を誘い、赤坂に惣菜・酒の店「ままや」を開店した。 店には邦子自身が通い、レシピを教えた。
開店のいきさつ
開店のいきさつは、向田邦子のエッセイ集『女の人差し指』に収められた『ままや繁盛記』に詳述されている。 彼女がいよいよ自炊料理にくたびれた頃である。
“ おいしくて安くて小奇麗で、女ひとりでも気兼ねなく入れる和食の店はないだろうか。切実にそう思ったのは、三年前からである。仕事が忙しい上に体をこわしたこともあるが、親のうちを出て十五年、ひとりの食事を作るのに飽きてくたびれたのも本音である。”
その3年後の1981年(昭和56年)8月22日、台湾の「遠東航空103便墜落事故」で邦子が突然の死去。 以後、「ままや」は、姉・邦子の死を乗り越え、妹・和子が切り盛りして営業を続けてきたが、1998年(平成10年)3月31日に幕を下ろした。 開店から20年、邦子の死から17年であった。
“十年、店をつづけたら、姉の意志に応えたことになると勝手に思った。「よくがんばった」と褒めてもらえそうな気がして、どんな事があっても十年はやる、と誰に相談するともなく決めていた。
“ 余裕や余韻をたっぷり残して、きれいさっぱり幕をおろしたい。 私の意地と見栄だったが、誰になんと言われようと、その決心は変えたくなかった。 よくつづけた、よくやった、という自己満足と肩の荷がおりる解放感、時間の自由……数えあげれば、きりがないが、熱い思いが胸のうちでうず巻いていた。 邦子が死んで十七年目。母九十歳、私は六十歳を迎えようとしていた。 平成十年三月末、惣菜・酒の店「ままや」の暖簾をたたんだ。
ひと口カレー
吟味されたご飯。
生れ育ったのが食卓だけは賑やかなうちだったこともあり、店屋ものや一汁一菜では気持までさびしくなってしまう。
かといって、仕事の合間に三品四品おかずを整えるのは、毎日となるとかなりのエネルギーが要る。
吟味されたご飯。
煮魚と焼魚。
季節のお惣菜。
出来たら、精進揚の煮つけや、ほんのひと口、ライスカレーなんぞが食べられたら、もっといい。
参考文献
- 『女の人差し指』ままや繁盛記:「ミセス」昭和53年11月号
- 『向田邦子 暮らしの愉しみ』:2003年6月25日