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2024年7月20日 (土) 19:32時点における版

レッド・ホット・ラヴァ・スープ

レッド・ホット・ラヴァ・スープ(Red Hot Lava Soup)は、アイスランドの最南端に位置するヴィーク村にある観光施設「ラヴァ・ショー」に併設されたレストランで提供されているスープである。 料理名は “ 赤く熱い溶岩 ” を意味する。

特徴

アイスランドヨーグルト「スキール」と刳りぬいたパンと蓋

レッド・ホット・ラヴァ・スープは、アイスランドの火山をイメージした料理である。 器となる黒いパンは溶岩が地上で冷え固まった岩石(火成岩:かせいがん)、パンの中に注がれた真っ赤なスープは地上から噴出する高熱で流動性のある溶岩を表している。

唐辛子を利かせたスパイシーな味で、他にトマト、タマネギ、ローリエ、赤ワイン、プライムビーフ、黒いんげん豆、赤レンズ豆などで構成されいるため、液状のスープというよりは粘性のあるシチューである。 パンの上面をカットして蓋とし、中身を刳りぬいて器状にしたものに熱々のシチューを注ぎ、再び蓋をして、パンの原型で供卓される。 辛味を調整できるようにスキール、別途で自由に味わえる刳りぬいたパンの内部が添えられる。

  • プライムビーフ(Prime Beef)は、米国における牛肉の格付けで最高ランクのもの。
  • スキール(Skyr)は、アイスランドの代表的なヨーグルト(厳密にはチーズ)で日本でも販売されている。味は濃厚で濃縮されたホイップ状の粘性がある。スープやシチューに発酵乳製品(ヨーグルトやサワークリームなど)を添えるのはボルシチなど他国の料理にも見られる。

ラヴァ・ショー

ラヴァ・ショー(ヴィーク村)

ラヴァ・ショー(Lava Show)は、2018年にオープンした “ 火山と溶岩 ” をテーマにした博物館とエンターテイメントの複合施設である。

開演は映画やプラネタリウムと同様で開始時間が決められている。 1回の公演時間は約1時間。 アイスランドにおける火山の歴史、地球規模で考察した火山活動、地質学的な噴火のメカニズムなどが映像と共に専門知識を持つガイドの説明によって学ぶことができる。 その他、個人的に聞きたいことや知りたいことはガイドに質問すればジョークも交えて丁寧に答えてもらえる。 また、実演では溶鉱炉で溶かした本物の溶岩を流し、凝固するまでの過程を間近で見学することができる。 強い光や輻射熱を発するため、防護用のゴーグルが用意される。

※開演までの待機時間は館内に併設された飲食ブースで食事を楽しんだり、開演にはビールなどを持ち込んで入場することも可能である。お土産コーナーには、火山や溶岩の関連グッズや名物のレッド・ホット・ラヴァ・スープやアーティク・マカロンも販売されている。

ヴィーク村

ヴィーク村(ミールダル地区)※村を見下ろす赤い屋根はヴィーク教会
カトラ火山(1918年10月12日発生)

ヴィーク村(ヴィーク・イ・ミールダル:Vík í Mýrdal)は、アイスランドで4番目に大きい氷河「ミールダルスヨークトル」の真南に位置する自治体であるミールダル地区(ミールダルスフレップ:Mýrdalshreppur)の主要な集落である。

ヴィーク村を含めたミールダル地区の北には、アイスランドで最も噴火が警戒されているカトラ火山がある。 カトラ山の標高は1,493mで、その山頂を覆うように厚さ200~700mのミールダルスヨークトル氷河が、595㎢(平方キロメートル)にわたって広がっている。 氷河のように分厚い氷床(ひょうしょう)が上面を覆う火山は、氷床を突き破るような噴火に至らなくても火山活動による地熱や氷底噴火による緩やかな氷河の融解を起こしている。 これらを含めて「氷底火山」または「氷河底火山」と呼ばれる。 カトラ火山は40年~80年の周期で噴火していたが、1918年の噴火以来、沈黙を続けている。 統計的な休止期間よりも長いため “ いつ噴火してもおかしくない状況 ” と推測されている。 これらの噴火のほとんどは氷河湖決壊洪水を引き起こしている。 1974年にフリングヴェーグル (Þjóðvegur:環状道路・国道1号線) が建設されるまで、この地域の横断は人々から恐れられていた。

カトラ火山が噴火すれば、地区全体を消滅させるほどの巨大な鉄砲水が発生する可能性がある。 村の高台にあるヴィーク教会は、そのような洪水から逃れられる唯一の建物であると信じられている。 そのため、村の人々は定期的な非難訓練を行い、噴火の予兆や兆候があれば、真っ先に教会に駆けつける心得がある。 また、村には科学者や観光客のための宿泊施設(総室1,400室)があり、宿泊する彼らもカトラ火山の危険性について説明を受けている。

※1755年10月17日に発生したカトラ火山噴火のピーク時の洪水流量は、20万~40万m3/s(立方メートル毎秒)と推定されており、これはアマゾン川、ミシシッピ川、ナイル川、長江の平均流量の合計である約26万6000m3/sに匹敵する。

アイスランドと火山

ファグラダルスフィヤルの溶岩原
リトリ・フルトゥールの噴火(現地日時:2023年7月10日発生)

アイスランド南西部に位置するレイキャネース半島を占める行政地区であるスズルネス(アイスランド語:Suðurnes)の「ファグラダルスフィヤル」(Fagradalsfjall)は世界有数の活火山地帯として知られている。

ファグラダルスフィヤルは、スヴァルツェンギ(Svartsengi)火山地域とクリースヴィーク(Krýsuvík)火山地域の間に面する幅5km・長さ16kmの広範囲にわたる火山地帯の名称である。 アイスランドでは、これらの火山活動を利用した地熱発電を行っている。 そのエネルギーを再利用した世界最大の露店温泉「ブルーラグーン」、自然観賞では極地で発生する「オーロラ」などが主な観光となっているが、他に「火山ウォッチング」もその一つとなっている。

アイスランドでは火山観測は危険を伴うため、観光として決して推奨していないが、大地の躍動を間近で一目見ようと世界中から訪れる人々やハイキングツアーは後を絶たない。 噴火による直接的な被災ではなく、大小の岩石が続く悪路による転倒骨折、軽装による低体温症であっても救急搬送は困難を極めるため、噴火現場を訪れる多数の観光客も当局にとっては懸念事項の一つとなっている。

また、噴火による災害は最悪の場合、甚大な被害と多くの人命に関わる重大な問題だが、この地で長年に渡り生活する人々にとっては自然現象の一環、いわば一種の “ 風土 ” や “ 風物詩 ” 的なものとなっており、避難命令を受け流す住民も問題となっている。 ただ、日本のように山頂から麓の町を高熱と共に猛スピードで襲う火砕流のような災害はない。 また、万一に備えて溶岩の流れを誘導するための防堤も実験的に設けられている。 アイスランドでは、陸上の噴火(陸上火山)で流出する溶岩より甚大な被害をもたらす脅威として警戒されているのは、噴火によって溶けた氷河がもたらす水害である。

※噴火の規模によっては、アイスランド国民保護・緊急事態管理局より避難勧告が発令され、ブルーラグーンが閉鎖されることもある。

ギャラリー

関連項目