「食道楽・冬の巻」の版間の差分
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彩花清香せいこう眉目びもくに映じ珍膳ちんぜん瑶盤ようばん口舌を悦よろこばす。 | 彩花清香せいこう眉目びもくに映じ珍膳ちんぜん瑶盤ようばん口舌を悦よろこばす。 | ||
主客談笑の間、和気陶然わきとうぜんとして逸興いっきょう更に竭つくる事なけん。 | 主客談笑の間、和気陶然わきとうぜんとして逸興いっきょう更に竭つくる事なけん。 | ||
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*第二百八十九 牛の臓物 | *第二百八十九 牛の臓物 |
2022年5月2日 (月) 00:56時点における版
食道楽(くいどうらく)は、村井弦斎の小説。 また、同小説から派生した同名の演劇作品。
大隈伯爵家温室内の食卓
○大隈伯爵家温室内の食卓(口絵参照)
我邦わがくにに来遊する外国の貴紳が日本一の御馳走と称し帰国後第一の土産話みやげばなしとなすは東京牛込うしごめ早稲田わせだなる大隈伯爵家温室内の食卓にて巻頭に掲ぐるは画伯水野年方みずのとしかた氏が丹青たんせいを凝こらして描写せし所なり。
この粧飾的そうしょくてき温室はいわゆるコンサーバトリーにして、東西七間けん南北四間、東西は八角形をなし、シャム産のチーク材を撰び、梁部は錬鉄製粧飾金具を用ゆ。中間支柱なく上部は一尺二寸間ごとに椽たるきを置き一面に玻璃はりを以って覆おおわれ、下部は粧飾用敷煉瓦しきれんがを敷詰め、通気管は上部突出部および中間側窓と、下方腰煉瓦こしれんがの場所に設けらる。
棚下の発温鉄管は室内を匝環そうかんし、冬季といえども昼間七十五度夜間五十五度内外の温度を保つ。
周囲における二層の花壇には、絶えず熱帯産の観賞植物を陳列し、クロートン(布哇はわい産大戟科だいげきか植物譲葉ゆずりはの類)、ドラセナー(台湾およびヒリッピン産千年木せんねんぼくの類)、サンセビラ(台湾産虎尾蘭とらのおらんの類)、パンダヌス(小笠原島辺へんの章魚たこの木き)その他椰子類やしるい等はその主なるものにて、これを点綴てんせつせる各種の珍花名木は常に妍けんを競い美を闘わし、一度凋落ちょうらくすれば他花に換え、四時しじの美観断ゆる事なし。
この爽麗そうれいなる温室内に食卓を開きて伯爵家特有の嘉肴珍味かこうちんみを饗きょうす。
この中うちに入る者はあたかも天界にある心地ここちして忽たちまち人間塵俗じんぞくの気を忘る。
彩花清香せいこう眉目びもくに映じ珍膳ちんぜん瑶盤ようばん口舌を悦よろこばす。
主客談笑の間、和気陶然わきとうぜんとして逸興いっきょう更に竭つくる事なけん。
目次
- 第二百八十九 牛の臓物
- 第四十四 トマトスープ
- 第百六 挽肉のカツレツ
- 第百七 挽肉のシチュー
- 第百十 挽肉のコロッケー
- 第百四十 野菜入オムレツ
- 第百四十一 マカロニシチュー
附録
- 病人の食物調理法の「第四十四 トマトスープ」