野番茄

野番茄（2021年）

野番茄（イェファンチェ）は、第二次世界大戦を経験した台湾の日本兵、1947年に起きた中華民国政権による激しい軍事弾圧「二・二八事件」の際に高雄で結成された武装学生自治組織である雄中自衛隊、そして二・二八事件の犠牲者の遺族たちに焦点を当て、沈黙と恐怖の時代を生き抜いた人々の体験を描いた作品である。

概略

台湾の高雄市は日本統治時代には軍事の中心地であり、1947年に起きた「二・二八事件」では、中華民国政権による激しい軍事弾圧を受けた地域でもある。

カメラは、彼らの日常の姿をゆっくりと映し、日常生活から当時の記憶を拾い上げ、歴史的被害を経験した人生の軌跡を呼び起こす。 彼らは、戦争に参加させられた無力感、愛する人を失った喪失感、、悲しみや憤りの訴えはなく、レッテルを貼られながら成長し、浮き沈みする起伏の富んだ人生などをただ記憶を語ることで、自分自身の傷跡を取り戻す。 当時の体験者たちが消えてゆき、彼らの心に深く根付いた記憶も忘れ去られようとする中、高雄に点在する軍事遺跡を静かに見つめながら、彼らが血と涙と青春を語り、忘れないようにしようとする姿は、まるで一つの抵抗であり、それは、大地にたくましく育ち、力強い生命の実を結び、毅然とした不屈の姿勢を見せる回復力を示す野生のトマトのようである。

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