アステカ文明

メキシコ州サンタ・セシリア・アティトランにある古代アステカ神殿

アステカ文明（Civilización mexica）は、現在のメキシコシティに首都テノチティトランを建国したナフア族系のメソアメリカ民族である。
15世紀の後期後古典期には、メソアメリカで知られる最大級の国家の中心地となり、テスココ湖の西、湖の中央と南の縁にある小島に定住していました。後古典期初期（900〜1200年）の終わり頃には、フエショトラ、コアトリンチャン、カルワカン、イスタパラパ、チャルコ、キシコ、ソチミルコ、タクバ、アズカポツァルコ、テナユカ、ザルトカンなどで見られたが、今日ではほとんど荒廃してしまっている。同じ地理的位置に対応する現在のメキシコシティは、その小島に位置している。メキシコの谷の湖の流域から来た他の民族（トラコパンとテクスココ）と同盟を結んでいました。メヒカは、現在のメキシコの中央部と南部に定住していたいくつかの先住民を服従させ、アルテペトル（行政単位）という領土にまとめました。

メヒカ族の特徴は、トマト、トウモロコシ、唐辛子、カボチャ、豆、カカオなど、人間の操作に依存する共生性の高い作物を3,445種も栽培していたことです。 衣服に羽毛を多用していたこと、260日の祭祀暦と365日の市民暦という天文暦を使用していたこと、青銅、金、銀を中心としたヒスパニック以前の精巧な装飾品や軍事用の冶金が行われていたことなどです。 また、サボテンやリュウゼツランを原料とした製品が多用され、火成岩（黒曜石）を手術や戦争のために使用していました。

アステカの定義

ナワトル語の（アズテカトル［asˈtekat͡ɬ］,単数）および（アズテカ［asˈtekaʔ］,複数）は、「アストランから来た人々」を意味し、メキシコ中央部のいくつかの民族の神話的な起源の場所である。この言葉は、アステカ自身は語源として使っていなかったが、メヒカの様々な移動の記録に見られ、アストランを一緒に出発した異なる部族のことを表している。アズランからの旅についてのある記述では、メヒカ族の守護神であるフイツィロポクトリが、旅の途中で従者たちに「今、君たちの名前はもはやアステカではなく、君たちは今メキシティン（メヒカ）だ」と語っている。

今日では、「アステカ」という言葉は、テクスココ湖の島にあったテノチティトラン（現在のメキシコシティ）のメヒカ族のみを指すことが多く、彼らは自分たちのことをメキシカ：Mēxihcah（ナワトル語の発音：[meːˈʃiʔkaʔ]）、トラテロルコを含む部族を指すテノチカ：Tenochcah（ナワトル語の発音：[teˈnot͡ʃkaʔ]）、またはコウルワ（ナワトル語の発音：[ˈkoːlwaʔ]）トラテロルコを除くテノチティトランのメキシカ族のみを指す。

また、テノチティトランの2つの主要な同盟都市国家、テスココのアコルワ族とトラコパンのテパネク族の住民を含むこともある。彼らはメヒカ族と一緒にアステカ三国同盟を結び、「アステカ帝国」としてよく知られているものを支配していた。テノチティトランを中心とした帝国を表す「アステカ」という用語の使用については、「カルフア・メキシカ」という用語を好んだロバート・H・バーロウ氏や「テノッカ帝国」という用語を好んだペドロ・カラスコ氏から批判されている。

他の文脈では、アステカは、メヒカ族、アコルファ族、テパネカ族と民族の歴史や文化的特徴の大部分を共有し、しばしばナワトル語を共通語として使用していた様々な都市国家とその民族すべてを指すことがある。この意味で「アステカ文明」とは、後古典期後半にメキシコ中央部に居住していたほとんどの民族に共通する特定の文化パターンをすべて含めて語ることが可能である。 このような用法では、「アステカ」という言葉を、アステカ帝国の支配圏に文化的または政治的に組み込まれたメキシコ中央部のすべての集団に拡大することもできる。

民族集団を表す場合、「アステカ」という言葉は、メソアメリカの年代記の後古典期におけるメキシコ中央部のナワトル語を話す複数の民族、特にテノチティトランを拠点とした覇権帝国の建設に主導的な役割を果たしたメキシカ族を指す。この言葉は、アステカ帝国に関連した他の民族、例えばアコルファ、テパネクなど、帝国に組み込まれた民族にも及びます。チャールズ・ギブソンは、彼の研究「スペイン統治下のアステカ」（1964年）の中で、メキシコ中央部のいくつかのグループを列挙しています。これらには、カルフアケ、クイトラフアケ、ミックスクイカ、ゾチミルカ、チャルカ、テパネカ、アコルフアケ、メキシカが含まれる。

古い用法では、ナワトルが以前は「アステカ語」と呼ばれていたため、この用語は現代のナワトル語を話す民族グループについてよく使われていた。言語学的には、ナワトル語とその近縁種であるポチュテック語やピピル語を含むウト・アステカ語族（ユト・ナウアン語族と呼ばれることもある）の一派に対して「アステカ人」という言葉が使われている。

アステカ人にとって「アステカ」という言葉は、特定の民族を表す代名詞ではなかった。むしろ、神話上の起源の地であるアズランからの継承を主張する、ナワトル語を話す民族ばかりではないいくつかの民族を指す包括的な言葉であった。アレクサンダー・フォン・フンボルトは、1810年に、メヒカ国と三国同盟との交易、習慣、宗教、言語によって結ばれたすべての人々の総称として、現代の「アステカ」の用法を生み出した。1843年、ウィリアム・H・プレスコットがメキシコ征服の歴史について書いた本が出版されると、現在のメキシコ人と征服前のメキシコ人を区別する手段として、19世紀のメキシコの学者を含め、世界中でこの言葉が使われるようになりました。この用法は近年になって議論の対象となっているが、「アステカ」という言葉の方がまだ一般的である。

歴史

アステカの社会についての知識は、いくつかの異なる資料に基づいています。神殿のピラミッドから茅葺き小屋に至るまで、多くの考古学的遺物は、アステカの世界がどのようなものであったかを理解するために利用することができます。しかし、考古学者が遺物の歴史的背景を解釈するためには、他の情報源からの知識に頼らなければならないことがよくあります。植民地時代初期の先住民やスペイン人が書いた文章には、植民地時代以前のアステカの歴史に関する貴重な情報が数多く含まれている。これらの文書は、アステカの様々な都市国家の政治的な歴史や、その支配者の血筋についての洞察を与えてくれる。このような歴史書は、絵入りの写本でも作られていた。このような歴史書は、絵入りの写本としても作成されており、中には全体が絵で構成されたものや、グリフを用いたものもあります。征服後の時代には、識字率の高いアステカ人や、先住民の習慣や物語を取材したスペイン人修道士によって、ラテン文字で書かれたテキストも多くありました。16世紀初頭に作成された重要な絵画的・アルファベット的テキストは、初代メキシコ総督にちなんで名付けられた「メンドーサ写本」で、アステカ帝国の政治・経済構造をスペイン王室に報告するために作られたと考えられています。これには、三国同盟が征服した国の名前、アステカ帝国に納められた税金の種類、社会の階級・性別構造などが記されている。アメカメカ・カルコのチマルパヒン、テノチティトランのフェルナンド・アルバラド・テソソモック、テクスココのアルバ・イクスリルショチトル、テクスココのフアン・バウティスタ・ポマル、トラスカラのディエゴ・ムニョス・カマルゴなどが有名である。また、征服の全歴史を書いたベルナル・ディアス・デル・カスティリョのように、スペインの侵略に参加したスペイン人による記述も多い。

また、スペインの修道士たちも年代記などの記録を残している。特に重要なのは、1524年にメキシコに到着した最初の12人のフランシスコ会士の一人、トリビオ・デ・ベナベンテ・モトリニアである。もう一人の重要なフランシスカンは、「モナルキア・インディアナ」の著者であるフアン・デ・トルケマダである。また、ドミニカ人のディエゴ・デュランは、先スペインの宗教やメキシカの歴史について幅広く執筆している。 アステカの宗教思想、政治・社会構造、メキシカの視点から見たスペイン征服の歴史など、さまざまな面で貴重な情報源となっているのが「フィレンツエ絵文書」である。1545年から1576年にかけて、フランシスコ会の修道士ベルナルディーノ・デ・サアグンと先住民の情報提供者や書記によって、スペイン語とナワトル語の二ヶ国語で書かれた民族誌的な百科事典の形で作成されたもので、宗教、暦、植物学、動物学、商売や工芸、歴史など、先植民地時代の社会のさまざまな側面に関する知識が含まれています。もう一つの知識源は、現代のナワトル語を話す人々の文化や習慣であり、彼らはしばしば、先スペインの生活様式がどのようなものであったかについての洞察を提供することができます。アステカ文明の学術的研究は、ほとんどの場合、考古学的知識と民族史的・民俗学的情報を組み合わせた科学的・学際的な方法論に基づいている。

古典期・後古典期における中央メキシコ

巨大都市テオティワカンにナワトル語の話者が住んでいたのか、それとも古典期のメキシコ中央部にはまだナワ族は来ていなかったのかは議論の分かれるところである。しかし、ナフア族は中央メキシコの高地に土着していたわけではなく、メキシコ北西部のどこかから徐々に移動してきたというのが一般的な見方である。6世紀にテオティワカンが滅びると、メキシコ中央部にはいくつかの都市国家が台頭してきたが、その中でもチョルーラやソチカルコなどの都市国家にはナワトル語を話す人々が住んでいたと考えられる。ある研究では、ナワ族はもともとグアナフアト周辺のバジオ地域に居住しており、6世紀に人口がピークに達した後、その後の乾燥期に人口が急速に減少したとしている。このバジョ族の減少は、メキシコの谷に新たな集団が侵入してきた時期と重なり、ナワトル語を話す人々がこの地域に流入したことを示しています。 これらの人々はメキシコ中央部に居住し、オト・マングエーン語を話す人々を排除しながら、政治的影響力を南に広げていきました。かつての遊牧民である狩猟採集民が、メソアメリカの複雑な文明と混ざり合い、宗教的・文化的慣習を取り入れることで、後のアステカ文化の基礎が築かれていきました。900年以降の後古典期には、ナワト ル語を話す人々が住んでいたことが確実な遺跡が数多く出現し、その威力を発揮した。その中には、イダルゴ州のトゥーラ遺跡や、メキシコの谷間にあるテナユカ、コルワカン、モレロス州のクアウナワックなどの都市国家が含まれている。

メキシカ人の移住とテノチティトランの建設

植民地時代の民族史資料では、メヒカ族自身がメキシコの谷に到着したことを記述しています。アステカ（ナワトル語でAztecah）という民族名は、「アストランから来た人々」という意味で、アストランとは北の方角にある神話上の起源の地を意味します。そのため、この神話的な場所からの継承を主張するすべての人々を指す言葉となった。メヒカ族の移動の物語は、トラスカルテカ、テパネカ、アコルファなど他の部族と一緒に旅をしていましたが、最終的には部族の神であるフイツィロポッチトリが、他のアステカ族から分かれて「メヒカ」という名前を名乗るように指示したと伝えています。彼らが到着した頃、この地域には多くのアステカの都市国家が存在していた。最も強力だったのは、南のコルワカンと西のアズカポッツァルコだった。アズカポツァルコのテパネカ人は、すぐにチャプルテペックからメヒカ人を追放した。1299年、コルワカンの支配者ココクストリは、彼らにティザパンの何もない原野に定住する許可を与え、やがてカルワカンの文化に同化していった。コルワカンの貴族は、伝説の都市国家トゥーラにルーツを持ち、メヒカはコルワカンの家系と結婚することで、その遺産を受け継いだのです。コルワカンに住んでいたメヒカ族は、再び追放され、移住を余儀なくされた。

アステカの伝説によると、1323年、メヒカは、鷲がウチワサボテンにとまって蛇を食べているビジョンを見せられた。そのビジョンは、彼らが集落を建設する場所を示していたという。メヒカは、メキシコ盆地の内湖であるテスココ湖に浮かぶ湿地帯の小さな島にテノチティトランを建設した。建国の年は1325年とされている。1376年、メヒカ人の父とコルファ人の母を持つアカマピヒトリが、テノチティトランの初代ヒューイ・トラトアニに選ばれ、メヒカ王家が誕生した。

アステカとトマト

現在のトマトは、南米、特にペルー、エクアドル、ボリビア、チリなどのアンデス地方に生息する野生のトマト（Solanum Pimpinellifolium）が原型となっているといわれている。しかし、アンデス地方ではこのワイルドトマトは栽培化されておらず、この地方を支配していた偉大なインカ文明が利用していたという証拠はない。今では当たり前のように食べられているトマトを家畜化したのは、メキシコのアステカ人だったのである。

アステカ人が多種多様なトマトを栽培していたことは、新大陸での初期の記録が証明している。
ベルナルディーノ・デ・サアグンは「大きなトマト、小さなトマト、リーフトマト、細いトマト、甘いトマト、......黄色いもの、非常に黄色いもの、かなり黄色いもの、赤いもの、非常に赤いもの、......真っ赤なもの、赤っぽいもの、バラ色の夜明け色のもの」と述べています。この言葉はナワトル語のtomatlから派生したもので、異なる種類のトマトや、似ているが無関係な果物であるtomatillo（殻付きトマト）の接尾語として使われました。Xitomatlは、現在私たちが「トマト」という言葉から連想する大きな赤い果実の名前でした。

---