「红糟鱼」の版間の差分
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福建省の省都である福州市の人々は、毎年必ず「春節」(旧正月の初一:元旦)の前に仕込み、旧正月の1日~15日まで食される料理である。 | 福建省の省都である福州市の人々は、毎年必ず「春節」(旧正月の初一:元旦)の前に仕込み、旧正月の1日~15日まで食される料理である。 | ||
冷蔵庫で保存可能で、好きな時に一切れ取り出し、蒸したり、粥や酒の肴としても手軽に食べられる。 | 冷蔵庫で保存可能で、好きな時に一切れ取り出し、蒸したり、粥や酒の肴としても手軽に食べられる。 | ||
| − | + | 栄養価が非常に高いとされ、福建省では産前産後の食事や高齢者向けの栄養食にもなっている。 | |
| + | また、外洋に面する福州市の長楽区では海鮮類の人気が非常に高く、ニベ科キグチ属のフウセイ(大黄鱼)は、方言で「黄瓜鱼 」、または、略して「瓜」と呼ばれる。 フウセイの場合は、腹わたを抜いて一匹丸々で調理する。 | ||
== 歴史と効能 == | == 歴史と効能 == | ||
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また、红糟は独特の塩味があるため、調理に使用する塩の量を減らすことができる。 | また、红糟は独特の塩味があるため、調理に使用する塩の量を減らすことができる。 | ||
红糟の利用は宋代(960年 - 1279年)まで遡るとされる。 | 红糟の利用は宋代(960年 - 1279年)まで遡るとされる。 | ||
| − | 元が支配した時代には漢方栄養学者で食養療法専門家である忽思慧(フースーフゥイ:モンゴル人または回族と考えられている)が編纂し、元朝第8代皇帝・モンゴル帝国第12代皇帝である元文宗(トク・テムル / ᠲᠥᠪᠲᠡᠮᠦᠷ | + | 元が支配した時代には漢方栄養学者で食養療法専門家である忽思慧(フースーフゥイ:モンゴル人または回族と考えられている)が編纂し、元朝第8代皇帝・モンゴル帝国第12代皇帝である元文宗(トク・テムル / ᠲᠥᠪᠲᠡᠮᠦᠷ ᠬᠠᠭᠠ )に献上した『飲膳正要』(1330年)には、脾臓を強化し、活力を補う効果があると記されている。 |
また、中国の代表的な本草学者で医師ある李時珍(りじちん)が明代の嘉靖31年(1552年)から万暦6年(1578年)にかけて編纂した本草学の集大成『本草綱目』には、红糟には血行促進作用があると記されている。 | また、中国の代表的な本草学者で医師ある李時珍(りじちん)が明代の嘉靖31年(1552年)から万暦6年(1578年)にかけて編纂した本草学の集大成『本草綱目』には、红糟には血行促進作用があると記されている。 | ||
同じく、明代の万暦24年(1596年)に浙江省平陽県出身の学者である屠本畯(トゥベンジュン)が福建省沿岸の様々な海洋生物の形態、生息環境、習慣、分布などを記録した中国最古の地方海洋生物図鑑『闽中海错疏』には、“ 石首魚は酒粕に漬けて食す ”(石首鱼,腌糟食之)と記されている。 | 同じく、明代の万暦24年(1596年)に浙江省平陽県出身の学者である屠本畯(トゥベンジュン)が福建省沿岸の様々な海洋生物の形態、生息環境、習慣、分布などを記録した中国最古の地方海洋生物図鑑『闽中海错疏』には、“ 石首魚は酒粕に漬けて食す ”(石首鱼,腌糟食之)と記されている。 | ||
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== 製法 == | == 製法 == | ||
| − | # | + | #ソウギョ、またはハクレンの頭を落とし、腹を開いて内臓を抜き、内壁の黒い膜を取り除いて洗浄する。 |
#魚の身を約5cm幅に切り、塩と生姜の薄切りに1時間ほど漬け込む。 | #魚の身を約5cm幅に切り、塩と生姜の薄切りに1時間ほど漬け込む。 | ||
#魚の切り身を風通しの良い場所に24時間吊るして乾燥させ、余分な水分を脱水する。 | #魚の切り身を風通しの良い場所に24時間吊るして乾燥させ、余分な水分を脱水する。 | ||
#魚の切り身を約200℃の油で揚げ、薄いきつね色になったら取り出して油を切り、余熱で水分を飛ばす。 | #魚の切り身を約200℃の油で揚げ、薄いきつね色になったら取り出して油を切り、余熱で水分を飛ばす。 | ||
#一度揚げた魚の切り身を再度、約160℃で30秒ほど揚げ、完全に水分がなくなるまで揚げて完全に冷ます。 | #一度揚げた魚の切り身を再度、約160℃で30秒ほど揚げ、完全に水分がなくなるまで揚げて完全に冷ます。 | ||
| − | # | + | #中華鍋に油を敷き、生姜とニンニクのみじん切り(好みで乾燥唐辛子も加える)を炒め、そこに红糟を加え、馴染ませるように加熱調理し、料理酒(黄酒)、薄口醤油、八角などの香辛料を適宜加えて味を調える。好みで、砂糖、五香粉、白酒を加えて味を調える場合もある。 |
#調理した红糟に水(1対1の割合)を加え、ある程度水分が少なり、とろみが出るまで煮込み、红糟をベースとした調味液を作る。 | #調理した红糟に水(1対1の割合)を加え、ある程度水分が少なり、とろみが出るまで煮込み、红糟をベースとした調味液を作る。 | ||
#揚げて冷ましておいた魚の切り身を調味液に漬ける。伝統的な製法では红糟の風味と色を魚に十分に吸収させ、鮮やかな紅色に仕上げるために冷蔵環境で24時間以上漬けることを必要とする。 | #揚げて冷ましておいた魚の切り身を調味液に漬ける。伝統的な製法では红糟の風味と色を魚に十分に吸収させ、鮮やかな紅色に仕上げるために冷蔵環境で24時間以上漬けることを必要とする。 | ||
#皿に盛り、ネギを散らして供卓する。 | #皿に盛り、ネギを散らして供卓する。 | ||
| − | + | ※八角を加えつつ、五香粉(八角を含む)を加える場合は、红糟の風味より八角の香りが支配的になる可能性があるため注意が必要である。 | |
== 料理の特徴 == | == 料理の特徴 == | ||
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== 関連項目 == | == 関連項目 == | ||
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[[Category:福建料理|鱼]] | [[Category:福建料理|鱼]] | ||
2025年8月4日 (月) 03:19時点における最新版
红糟鱼(ホンザオユー)は、福建省の伝統料理である。
概要
福建省の省都である福州市の人々は、毎年必ず「春節」(旧正月の初一:元旦)の前に仕込み、旧正月の1日~15日まで食される料理である。 冷蔵庫で保存可能で、好きな時に一切れ取り出し、蒸したり、粥や酒の肴としても手軽に食べられる。 栄養価が非常に高いとされ、福建省では産前産後の食事や高齢者向けの栄養食にもなっている。 また、外洋に面する福州市の長楽区では海鮮類の人気が非常に高く、ニベ科キグチ属のフウセイ(大黄鱼)は、方言で「黄瓜鱼 」、または、略して「瓜」と呼ばれる。 フウセイの場合は、腹わたを抜いて一匹丸々で調理する。
歴史と効能
红糟(ホンザオ)は、もち米を紅麹菌で発酵させた赤色の酒粕である。 また、红糟は独特の塩味があるため、調理に使用する塩の量を減らすことができる。 红糟の利用は宋代(960年 - 1279年)まで遡るとされる。 元が支配した時代には漢方栄養学者で食養療法専門家である忽思慧(フースーフゥイ:モンゴル人または回族と考えられている)が編纂し、元朝第8代皇帝・モンゴル帝国第12代皇帝である元文宗(トク・テムル / ᠲᠥᠪᠲᠡᠮᠦᠷ ᠬᠠᠭᠠ )に献上した『飲膳正要』(1330年)には、脾臓を強化し、活力を補う効果があると記されている。 また、中国の代表的な本草学者で医師ある李時珍(りじちん)が明代の嘉靖31年(1552年)から万暦6年(1578年)にかけて編纂した本草学の集大成『本草綱目』には、红糟には血行促進作用があると記されている。 同じく、明代の万暦24年(1596年)に浙江省平陽県出身の学者である屠本畯(トゥベンジュン)が福建省沿岸の様々な海洋生物の形態、生息環境、習慣、分布などを記録した中国最古の地方海洋生物図鑑『闽中海错疏』には、“ 石首魚は酒粕に漬けて食す ”(石首鱼,腌糟食之)と記されている。 この石首魚とはニベ科の魚類を意味するが、主に利用されるのはニベ科キグチ属の魚である。 福州市の料理人たちは特産である红糟と魚を組み合わせた地域特有の調理法を生み出し、1980年代には福建省の宴会で定番の料理となった。
製法
- ソウギョ、またはハクレンの頭を落とし、腹を開いて内臓を抜き、内壁の黒い膜を取り除いて洗浄する。
- 魚の身を約5cm幅に切り、塩と生姜の薄切りに1時間ほど漬け込む。
- 魚の切り身を風通しの良い場所に24時間吊るして乾燥させ、余分な水分を脱水する。
- 魚の切り身を約200℃の油で揚げ、薄いきつね色になったら取り出して油を切り、余熱で水分を飛ばす。
- 一度揚げた魚の切り身を再度、約160℃で30秒ほど揚げ、完全に水分がなくなるまで揚げて完全に冷ます。
- 中華鍋に油を敷き、生姜とニンニクのみじん切り(好みで乾燥唐辛子も加える)を炒め、そこに红糟を加え、馴染ませるように加熱調理し、料理酒(黄酒)、薄口醤油、八角などの香辛料を適宜加えて味を調える。好みで、砂糖、五香粉、白酒を加えて味を調える場合もある。
- 調理した红糟に水(1対1の割合)を加え、ある程度水分が少なり、とろみが出るまで煮込み、红糟をベースとした調味液を作る。
- 揚げて冷ましておいた魚の切り身を調味液に漬ける。伝統的な製法では红糟の風味と色を魚に十分に吸収させ、鮮やかな紅色に仕上げるために冷蔵環境で24時間以上漬けることを必要とする。
- 皿に盛り、ネギを散らして供卓する。
※八角を加えつつ、五香粉(八角を含む)を加える場合は、红糟の風味より八角の香りが支配的になる可能性があるため注意が必要である。
料理の特徴
- 色彩:红糟に含まれる色素が魚肉に鮮やかな濃い赤色を与える。
- 食感:二度揚げすることで外をクリスピーに仕上げつつ、中は柔らかである。また、蒸し物にしても柔らく、しっとりとした食感になる。
- 風味:红糟のほんのりとした甘みと塩味をベースとし、加えられた薬味や五香粉などの香辛料が複雑な香りを醸し出す。
伝統食品
红糟鱼は、福建省の中東部に位置する福州市では春節の宴会に欠かせない伝統料理である。 個人経営の飲食店では伝統的な味わいや風味を損なわないように魚を吊るして干し、薪窯(まきがま)を利用して揚げるなどの古典的な調理法が今でも用いられている。 福建省の東北部に位置する寧徳市の古田県では、红糟を用いた宴である「红糟宴」で供される6つのメイン料理の1つとして挙げられている。
ギャラリー
社会・時事
- 2018年:中国中央テレビ(CCTV)の中国国内におけるホットスポットに焦点を当てた消費者向けの番組『消费主张』で「红糟鱼」が調理されている夜市の様子が報道された。
関連項目
- 炸糟鳗鱼(福建省)